【塚本俊太郎の金育 第2回】これはあるある! 興味がある分うまい話に乗ってしまい…大人のための金融教育

前回は、高校でライフプランニングや資産形成が教えられるようになり、学校での金融教育が少しずつ拡充されつつあることを取り上げました。

ちなみに、大学では金融広報中央委員会・金融庁・業界団体の協力による金融リテラシー講座が一部の大学で展開されていますが、もっと数多くの大学で教えられるといいなと思っています。

「最速で1億円を稼ぐ方法」とか、なんか怪しいかも?

 

さて、そうしたなか、学校をすでに卒業してしまっている大人たちは、どのように金融リテラシーを身につければいいのでしょうか?

会社が金融教育の受け皿になっているかというと必ずしも十分でなく、社会人になっても給与明細の見方がよくわからないとか、確定拠出年金などの制度の説明は行われていても具体的に「金融商品をどう選んだらいいか分からない」といった声を聞きます。

会社に属さない自営業やフリーランスも増えているので、「大人の金融教育」は個々人に委ねられているのが現状です。

 

では、どこから手を付けるべきでしょうか――。私は、中立公平な機関が発信している情報からまず学んだほうがいい、とお話ししています。

昨年(2022年)の金融リテラシー調査で、「金融教育は受けたが、金融リテラシーが低い(金融リテラシーの問題で正解率が低い)人は、金融教育を受けなかった人と比べて金融トラブルの経験率が高い」という結果があり、金融教育に携わる関係者のあいだで話題になりました。

金融教育を受けたけれど、偏っていたり、中途半端な知識だけでは、興味がある分うまい話に乗ってしまい、かえって詐欺などに遭う確率が高くなるということなのでしょう。

最近はYouTubeなどでも「最速で1億円を稼ぐ方法」といったテーマのコンテンツの再生回数が多かったりしますが、こういった極端な内容の中には詐欺まがいの話もあったりするので、要注意です。

金融庁などが発信するコンテンツでは、さまざまな金融商品の特徴やそのリスク・リターン、投資の基本である長期積立分散投資を非課税制度を活用して行うなどが説明されています。まずは、公的機関のコンテンツから学び始めることがオススメです。その後、投資に関する本を読んだり動画を見たりする際に、情報の正誤を見分けるベースができると思います。

 

漠然とした「不安」から解消されるために……

 

そこで今回は、大人が金融の基礎を学べるコンテンツをご紹介しましょう。

「マネビタ ~人生を豊かにするお金の知恵~」

金融経済教育推進会議(金融経済教育に関わる官庁や団体による組織)が開発したeラーニングの無料講座で、社会人向けの内容になっています。週ごとに、理解度テストがあり、修了すれば修了証がもらえます。「金融と経済を学ぶ」「ライフプランを描く」「お金を借りる」「お金を増やす」「リスクに備える」「トラブルを避ける」など6つの分野、16のテーマで、金融リテラシーの基本的な内容を網羅しています。このコンテンツは、ドコモのgacco(ガッコ)というオンライン動画学習サービスで提供されています。

中学生・高校生のみなさんへ 金融庁 

金融庁のホームページで中高校生向けに、金融に関するさまざまなコンテンツが紹介されています。手前みそですが、この中で私が担当した金融経済教育指導教材 も、大人が学んでもいいような内容になっています。パワーポイント資料のノート欄に、詳しい解説を書いています。特に第4章の「貯める・増やす」には、保護者の方や先生方向けに書かれた「応用編」がありますので、参考にしてみてください。

副教材として、家計管理やライフプランのシミュレーションもありますので、ご興味あればぜひ見たり、使ったりしてみてください。

暮らしに役立つ身近なお金の知恵・知識情報サイト ─ 知るぽると:金融広報中央委員会

金融広報中央委員会の「知るぽると」のウェブサイトにも、金融に関する各種情報や、ライフプランのシミュレーションツール 家計簿の練習帳や夢を考えながらライププランを作るための情報 などがあります。

 

少し学んでみたら、実際にご自身でもやってみてください。家計管理が簡単にスマホでできる無料の家計簿アプリもありますし、ライフプランのシミュレーションが簡単にできるツールも金融庁のウェブサイトにあります。毎月の収支を見える化できると、固定費の見直しなどが行いやすくなり、あまり無理することなく毎月貯蓄できるようになります。

また、今後大きな支出がどのぐらいあるのか、例えば子どもの教育費にどのくらいかかるのか、といったことをしっかり把握できると、将来に向けて時間をかけて準備することができます。

世の中には貯金をしっかりしていても、将来に不安を感じる方が多いです。

 

次回は、今使うお金と将来に備えるお金の比率をどうするべきか――。資産形成にあたって投資資金の作り方、投資のしくみなどについて取り上げたいと思います。

(塚本俊太郎)

プロフィール

塚本俊太郎(つかもと・しゅんたろう) 金融教育家 塚本俊太郎ホームページ
1994年、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論を卒業。20年以上、外資系運用会社で勤務したのち、金融庁の金融教育担当として高校家庭科の金融経済教育指導教材や小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在は金融教育家として、金融リテラシーや資産形成について講演活動などを行っている。
2023年3月期 Eテレ「趣味どきっ! 今日から楽しむ“金育”」講師。
YouTube「塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル」
日本金融教育推進協会理事。グリーンモンスター株式会社顧問。日本CFA協会執行理事。NewsPicks ProPicker。

 

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