東証が企業に求めた「PBR1倍未満」の解消 達成できないと、なにが問題なの?

みなさん、こんにちは。

いま、PBR(株価純資産倍率)が話題です。直近のPBRのニュースについて、まとめようと思います。

そもそも、PBRは株価を1株あたり純資産で割ったものです。1株あたり純資産は、企業を解散した場合に株主のものになる資産とみなせます。「PBR1倍未満」というのは、企業解散時にもらえる資産より安い値段で株価が買える状態です。

PBR「1倍割れ」問題とは、いったい何なのでしょうか――。

 

日本の企業は稼ぐ力がない?

「PBR1倍割れ」は、日本の企業の成長力の弱さの象徴とされてきました。東京証券取引所は、株価の割高・割安を判断する投資尺度のひとつであるPBRが低迷する企業を念頭に、改善策の開示を要請しています。

その「低すぎる」水準が、「PBR1倍未満」というわけです。「PBR1倍未満」の状況の株価は「割安」と言えますが、魅力が低いことの裏返しでもあります。東証は業種別のPBRを公表しており、最も低いのは「銀行業」の0.3で、「パルプ・紙」の0.5、「石油・石炭製品」と「鉄鋼」が同水準の0.6となっています。

 

PBRの低迷については、これまでもさまざま議論されてきました。主な観点としては、稼ぐ力を示す代表的な指標の自己資本利益率(ROE)が株主の要求水準に届いていなかったり、将来の成長に期待が持てなかったりするのが原因と考えられています。

一方、東証は今年に入ってから本格的なPBRの改善について着手しています。春にもプライム市場とスタンダード市場を対象に、「PBR1倍」を割り込んでいる企業に改善に向けた取り組みや進捗状況の開示を要請する方針を示しました。
そのうえで、具体的な動きをみると、例えば大日本印刷(証券コード:7912)は過去最大となる上限1000億円の自社株買いを発表しました。資本が過度に膨らまないようにするため自己資本利益率(ROE)を上げる効果があります。

 

企業が「カイゼン」に向けて動き出した!

また、パソナグループ(2168) は有利子負債を活用することで積極投資を進め、市場からの成長期待につなげています。さらに、市場ではPBRの低い銘柄に買いが集まりました。9月3日時点でPBRが0.46倍の神戸製鋼は安定した株主還元が好感され、22年末と比較して7割近く株価が上昇しました。
銀行株についても、直近では三菱UFJフィナンシャル・グループ株(8306)を中心に株価の上昇がみられています。

 

これらの動きを見ても、東証の要請は企業価値の向上への取り組みを促進しており、その結果として市場全体の活性化に寄与していることがわかります。

しかし、これらの取り組みがすべての企業で成功するわけではなく、それぞれの企業は自社の事業環境や成長戦略に応じて適切な対策を講じる必要があると考えています。

一方、投資でのアクションでは、低PBRをターゲットとした投資信託も数多く組成されているので、一度チェックしてみるのもいいのではないかと考えています。
では、また!

 

プロフィール

ペガゾ

大学で金融政策を専攻。株式投資についても、個人でファンダメンタルズ分析をメインに行っていた。現在は金融業界で働いており、個別株は投資できないものの、引き続き情報収集を行っている。

「日本でも、個人投資家がもっと増えればいい」と思っている。

 

 

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