中期経営計画策定の意義を知ろう! ススム先生の「タイパ決算書分析」塾

 

 カブオ君、マナミさん、「タイパ決算書分析」塾、第14回です。嵐のような8月が終わりましたね。

 
 

月末にはホンモノの台風がやって来ました。

 
 

念のため、7月末と8月末の日経平均株価と極洋の株価を見ておきましょう。

 
 

はい!
日経平均株価は、7月末が39,101円82銭、8月末が38,647円75銭で454円7銭の下落。下落率は1.16%でした。
極洋は7月末が4,055円、8月末が3,985円で70円の下落。下落率は1.72%でした。大暴落と大騒ぎしたワリにはおおむね横バイか、という感じです。

 
 

もっとすごい下落かと思っていました。ちなみに最安値を拾ってみると、日経平均株価は8月5日のザラ場で31,156円12銭、7月末から7,945円70銭の下落。下落率は20.32%。極洋も8月5日のザラ場で3,400円、7月末から655円の下落。下落率は16.15%。さすがに大きな下落でした。

 

 

極洋の「KPI」と「KGI」

 

結局、売買しなければ、それほど影響なかったと言うことですか?
最安値付近で買っていれば、といつもの後悔をしています。

 
 

まさしくタラレバの世界ですね。前から言っているように、自分の投資スタンスが確立していること、その支えとして投資先の内容を理解していることがポイントなんですよ。では、極洋の中期経営計画を覗いてみましょう。

 
 

IRのページから、中期経営計画を開きました。イメージ図「強いキョクヨーへ」……。インパクトあるなあ。「人財、組織」「グローバル化」「4つの事業」そしてミッション。数字として中期経営計画の6つの「KPI」を表明していますね。ん、KPIってなんだっけ?

 
極洋の中期経営計画 Gear Up Kyokuyo 2027 のイメージ図

極洋の中期経営計画 Gear Up Kyokuyo 2027 のイメージ図

株式会社 極洋 中期経営計画

 

「Key Performance Indicator」のことよ。「重要業績評価指標」って訳すかな。業務のパフォーマンスを計測・監視するために置く定量的な指標のことだとマーケティング理論の授業で学んだ気がします。

 

 

 

マナミさんの言うとおりですね。ところでKGIは知っていますか?

 
 

ロシアの組織……。

 
 

それはKGB! えっと、「Key Goal Indicator」。重要目標達成指標だと思います。

 
 

そうですね。KGIは最終的な目標に対する達成度を示す指標、KPIは各プロセスの目標に対する達成度、ということです。極洋の場合、「強化・拡大を達成し、成長への加速を確実にするため、次のKPIを設定し、事業運営を進める」としていますから、強化・拡大の達成と確実な成長への加速がKGI、その達成のため、示された6項目の目標値がKPIということですね。KPIを達成すればKGIにたどり着くわけです。

 
 

大学入試合格がKGI、国語が80点、英語が80点…… というのがKPIという感じですか?

 
 

国語の80点も、その点を取るための勉強時間が〇〇分というふうにKPIを細分化していくのよ。
でも、中期経営計画の達成って大変じゃないですか? 極洋は2027年3月期、つまり3年間を計画期間としていますが、3年先のことなんてわかるのかな、と思います。円高もあれば円安もある、株式の暴落もある、金利は上がる、インフレは起きる、地震もあれば台風も来る、海外なんて戦争やテロも起きる、新型コロナウイルスでパンデミック、こんな時代に3年間の計画って決めるのも達成するのも難しいと思うんですけど。

 
 

一理ありますね。そもそも中期経営計画の策定や開示は義務ではないし、米国の企業はほとんど発表していないです。日本の上場企業ではどうでしょう、3分の2くらいが公表しているのではないかな? 中期計画があることで、ビジョンや戦略、目標認識が明確になる、というメリットがあります。ただ、「中計病」という言葉もありますね。

 
 

中計病? 中二病みたい……??

 

極洋の中期経営計画、ポジティブで強化・拡大の力強さを感じるけれど……

 

マナミさんが言うように、中期の市場環境予測は困難なこと、中期経営計画の策定自体が目的化になることなどの弊害、問題点の指摘があるのです。「精緻に数値を積み上げすぎて、現場が疲弊している」として中期経営計画の策定を廃止した大手企業もありますよ。
こういう問題点があることを理解したうえで中期経営計画を策定し運用することも大切ですね。極洋はKPIとして6項目を掲げています。これくらいシンプルなほうがわかりやすいし事業の柔軟性も確保できるのでは、と思います。

 
 

売上高4000億円
営業利益135億円
経常利益135億円
海外売上高比率15%以上
ROIC(投下資本利益率)6%以上
DOE(株主資本配当率)3%以上
 第一印象ですが、目標水準が高すぎる感じが……。2024年3月期の売上高は2616億円、営業利益、経常利益は88億円なのに。。

 
 

2025年3月期の売上高3000億円、26年3月期3400億円、27年3月期4000億円。営業利益と経常利益は25年3月期100億円、26年3月期118億円、27年3月期が135億円というステップですね。

 
 

そう言われると手が届くような気がする……。利益は88億円から135億円。47億円、約53%も増えるんですね。1株利益がこのまま増えたら株価は3年で1.5倍、6000円くらいになる。。足元のPER(株価収益率)は6.8倍ですから、これが10倍くらいになれば9000円とか、、今の4000円からすれば倍以上か・・

 
 

最近はDOE、株主資本配当率の目標を掲げる会社も多いですね。DOEは、
年間配当総額÷株主資本
で簡単に計算できます。
極洋の直近の1株純資産は4,965円ですから、3%で1株配当は約149円になりますね。現在の1株配当は100円ですから1.5倍弱の水準です。しかも3年間で利益が積み上がって純資産が増えれば1株配当はさらに増えますね。現在の株価は4000円前後ですから、150円の配当金なら配当利回りは3.75%、100株で2500円相当の株主優待もある。お二人の好きなパターンじゃないですか?

 
 

パーフェクト! 買おう!

 
 

ポジティブで強化・拡大の力強さを感じる中期経営計画ですね。中期経営計画がないと、こういう計算すらできないから、公表してくれるのはありがたいです。
でも、こんなに都合よくいくのかな?という感じも……。

 
 

その心配も理解できますよ。
次回は、中期経営計画の実現可能性について考えてみることとしましょう。
カブオ君、マナミさん

 
 

はいっ!

 

関連記事一覧