「新NISA」をわかりやすく! 1時間でマスターできる“教科書” 著者 福島理さんに聞く
目次
いよいよスタート! 新NISA さて、なにから始める?
止まらぬ円安、物価高、「老後2000万円問題」と、将来への不安は募るばかり。そんな今、国民の資産形成に対する興味はますます高まりつつある。
さらに岸田文雄首相が掲げる資本所得倍増計画(新しい資本主義)なども、わたしたちの資産形成を積極的に後押ししている。その一つが、「新NISA」のスタートだ。2024年1月、これまでの一般NISA、つみたてNISAが、新たな制度へと生まれ変わる。年間120万円のつみたて投資枠と240万円の成長投資枠が付与され、投資目的別に使い分けをできるようになるなど、さまざまな点で改定される。
とはいえ、この新NISA。制度自体は魅力的なものだが、少々複雑な部分もあり、投資の初心者は何から手を付けたらいいか迷うかもしれない。
そんな新NISAの仕組みや始め方について、図解を交えながらわかりやすく一冊にまとめた「1時間でマスター! マンガと図解でわかる 新NISAの教科書」を執筆したマネックス証券 マネックス・ユニバーシティ室長の福島理(ふくしま・ただし)さんにを聞いた。
新NISAは「つみたて」と「成長投資」が併用できる。
―― さっそくですが、ズバリ新NISAの制度での注目すべき改定点と、どんなメリットが考えられるのか、教えてください。
福島理さん 日本では2014年株式や投資信託を対象に一般NISAがスタートし、2016年にジュニアNISA、そして2018年にはつみたてNISAが開始されました。
異なる制度が別々でスタートしてしまったので、つみたてNISAと一般NISAの両方をやろうとしてもできない仕組みになってしまっていて、非常に不便でした。
今回の改正では、現行のつみたてNISAを「つみたて投資枠」で積み立てながら、一般NISAのような使い方ができる「成長投資枠」で個別株や投資信託に投資できるという点が一番メリットで、注目ポイントだと思います。
さらに、これまでは商品を売却しても非課税枠は復活しませんでしたが、新NISAでは売却した場合、その分の非課税保有限度額(買付金額ベース)が翌年以降に復活して再利用が可能となります。例えば、新NISAで50万円購入した株式が倍の100万円になった時に、20万円を売却した場合、そのうちの10万円(簿価)が翌年に復活して再利用できるようになる、ということです。
この改定により、投資した商品に利益が乗ってきたら利益確定をさらに機動的に投資することもできますし、結婚、進学、マイホームの購入などお金の出入りがあるライフイベントに合わせた資金移動も自由になりますね。
投資商品の選び方の極意
―― これまでの制度と比べて、かなり自由度が高まった印象があります。その一方で自由度が高いあまり投資初心者からすると「口座は開いたけど、何を買ったら良いんだ!?」そんな疑問が生まれてきそうです。実際にどのように選んでいけば良いのでしょうか。
福島さん まず前提として「投資を何のためにやるか」「今、自分の資金がいくらあるか」「毎月の収入」「年齢」など、何が「良い」のかは個人の事情によって大きく異なってきます。だから、「これを買うべき」みたいなものはあまりありません。
例えば20歳で貯金が10万円、月の収入もほとんどないという人と、退職金を手に入れた60歳では、「何にどのくらいの期間、投資すべきか」は大きく変わってくるのは理解してもらえると思います。
ただ、一つ共通して言えることは、「将来のことはわからない」ということですね。プロでも正確に未来を予測することは難しい。だから、基本はコツコツと幅広い銘柄に分散して積立投資をすべきと考えます。
—— なるほど。それぞれの人生設計によって大きく変わるものの、積立投資を軸に検討する必要があるということですね。
福島さん ええ。ちなみに投資商品の選び方ですが、参考として本書ではランキングの形式で人気の商品を紹介していますよ。こちらのランキングからもおわかりいただけるように、分散投資が可能な全世界株式やS&P500といった投資信託への投資が人気です。
【つみたてNISA】投資信託買い付け口座ランキングTOP10
※調査期間2023年1月~6月で、信託報酬は2023年8月時点
※マネックス証券取引データより
S&P500は米国市場に完全分散投資、一方で全世界株式はアメリカやヨーロッパ、日本など世界各国の株式に投資する商品ですね。やはり、アメリカは世界でトップの経済大国であり、過去数十年間をみてもその市場成長力は魅力的。多くの投資家に将来的な成長も期待されていることもあって人気のようです。
―― ランキングを見てみると、同じ米国株に投資する投資信託でもさまざまな商品があるんですね。
福島さん 投資信託は大きく分けて「アクティブファンド」と「インデックスファンド」の2つに分けられます。
インデックスファンドは基本的には株価指数に連動するよう設計されています。一方、アクティブファンドはその株価指数よりも良いパフォーマンスを得るためにファンドマネージャーがいろいろと分析しながら、さまざまな銘柄を購入したり売却したりします。
市場が好調な際にはインデックスファンドのリターンが高くなる傾向があって、運用にかかる手数料が安いことからも、最近はインデックスファンドが人気ですね。
—― 確かに長期間の運用を前提にすると「塵も積もれば山となる」ではないですが、運用コストが1円でも安いほうが有利ということなんですね!
ズバリ!新NISAの使いこなし術!
—— 新しいNISAの概要や投資商品の選び方がわかってきたような気がします。
例えば、もう少しリスクをとって、より大きなリターンを狙ったりする場合、他の商品を組み入れる方法なんてあったりしますか?
福島さん まず、今回の制度では240万円の成長投資枠で個別株に投資することができます。その枠を活用し、将来伸びそうな企業に少々リスクをとって投資してみるというのも良いでしょう。
また、新興国株式インデックスという投資信託は新興国を対象にした投資信託があります。リスクも存在する分、相応のリターンを見込むことができます。もし、金や債券などさまざまな資産に分散していきたいのであれば、バランス型の商品もありますよ。更に、債券や不動産など8種類の資産に分散することができる投資信託もあります。コアとなる安定した値動きをする商品と、プラスアルファのリターンを見込んだ商品を組み合わせて、自分自身の人生設計に合わせたオリジナルのポートフォリオを組むと良いと思います。
―― ありがとうございました。
(インタビュア:明治大学・投資サークル Breakouts! 城正人)
著者プロフィール
福島 理(ふくしま ただし)
マネックス証券 広報室長兼マネックス・ユニバーシティ室長
大学を卒業後、大手印刷機械メーカーに入社。個人投資家としての成功体験を経て2005年、証券業界に転身。自らの投資経験に基づき、個人投資家にテクニカル分析の普及と、啓蒙活動を行う。現在はマネックス・ユニバーシティ室長として、投資を始める人へ「金融リテラシー向上」のための教育活動に従事。テレビ、ラジオ番組への出演のほか、雑誌やWEBメディアでコラムを執筆。日本テクニカルアナリスト協会 国際認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
著書に「勝ってる投資家はみんな知っている チャート分析 」シリーズ(扶桑社)、「1時間でマスター! マンガと図解でわかる 新NISAの教科書 」(扶桑社)がある。