【第4話】自己資本比率を観察しよう ススム先生の「タイパ決算書分析」塾
カブオ君、マナミさん、「タイパ決算書分析」塾、4回目です。
前回最後の「自分が経営者だったら、どのような自己資本比率の会社にしますか?」という問いは考えさせられました。言ってみれば人生観ですね。
そうですね。自己資本比率は会社にとっても理念やビジネスモデルなどが数字に表れる一つなんです。ただ、事業というのは思いどおりにいくものではありませんから、結果としての自己資本比率という面もあります。
その点で、一期だけでなく数期の自己資本比率の推移を見ることは企業を知るために大切なんです。では、「極洋」の推移を眺めてみましょう。
目次
自己資本比率は過去からの推移を見てみる!
財務ハイライトを見ると、2019年から5年分が載っていますね。
27.7% ⇒ 29.4% ⇒ 34.7% ⇒ 32.7% ⇒ 32.5%
30%前後、という感じですね。もっと前が知りたいなあ。
有価証券報告書では、主要な経営指標の推移として過去5年分が載っています。もっと前が知りたいのなら、2018年の有価証券報告書を見るといいですね。
なるほど! 探偵みたいな気分になってきました。えっと、アーカイブに以前の有価証券報告書が並んでいました。平成26年3月から平成30年3月……。西暦と和暦、ややこしいなあ。
たしかに! でも、91期から95期となっているから正しいわよ。
お、よかった。この5年間は
23.4% ⇒ 25.5% ⇒ 23.9% ⇒ 25.6% ⇒ 27.2%
並べてみると、
23.4% ⇒ 25.5% ⇒ 23.9% ⇒ 25.6% ⇒ 27.2% ⇒ 27.7% ⇒ 29.4% ⇒ 34.7% ⇒32.7% ⇒ 32.5%
20%台前半から30%台前半まで右肩上がりに上昇した10年だったわけか。
これについてマナミさんはどう考えますか?
う~ん。財務体質が強化された10年だったのかなと思いますし、うまく経営したのでは、と思います。
でも途中で自己資本比率が下がっている年もありますよ。赤字だったのかな?
カブオ君は考えが足りないわね。自己資本比率が低下するのは純資産が減ることもあるけれど、分母の総資産が増えても低下するわよ。
それでは自己資本比率が低下した決算期の純資産と総資産を見ましょう。
え~と、
98期 ⇒ 99期に34.7%から32.7%に低下していますが、この2期の純資産は
399億75百万円 ⇒ 421億74百万円
と、21億99百万円、5.50%増えていて、総資産は
1163億31百万円 ⇒ 1304億60百万円
と、141億29百万円、12.14%も増えていました。原因は総資産の増加でした。
そうでしたね。では、なぜ総資産が増えたのか。設備投資なのか、売掛金か、投資かなどについて深掘りしたいところですが、タイパですから今回はスルーしましょう。
既読スルーはつらいですけどね。
カブオ君なんてスルーされて当然だわ。
中田ヒデのスルーパスに追いつけないフォワードも多かったですね。
先生、しっかりっ!
あっ、すいません。
極洋の自己資本比率の推移を見ると、利益を計上して純資産が蓄積し、徐々に比率が上昇した10年だったと想像できますね。