株価の史上最高値更新の“立役者” 米NDIVIAってどんな会社?

NDIVIA、日本ではあまりなじみがないけれど……

連日のように最高値を更新している日経平均株価は2024年3月4日、ついに4万円台に突入しました。2月22日にそれまでの最高値、1989年12月29日の3万8957円44銭を上回ってから、わずか1週間(5営業日)での出来事です。

そんな日経平均株価の史上最高値を押し上げる要因の一つになったとされるのが、米国の世界的半導体企業、「NVIDIA(エヌビディア)」の存在です。日本時間で2月22日午前6時に発表した決算が市場予想を上回ったことといわれています。

誰もが知っている、GoogleでもAmazon.comでもFacebook(META)でもAppleでもMcrosoftでもない。日本人にはあまりなじみがない企業です。

「NVIDIA」とは、いったいどんな企業なのでしょう――。

NDIVIA

世界的な半導体企業「NVIDIA」の好決算が株価高騰のはじまり……

 

NVIDIAの歴史と発展

NVIDIAは、半導体および人工知能(AI)の分野で世界的にリーダーシップを発揮し、その革新的な技術によってコンピューティングの未来を切り拓いている会社です。1993年、ジェンスン・フアン、クリス・マロコフスキー、カーティス・プリームら3人のエンジニアによって創業されました。

初めての製品である「GeForce 256」は、1999年に登場し、これが世界初のGPU(Graphics Processing Unit=画像処理装置)としてゲームや映像制作などの分野で画期的な進化をもたらしました。その後、NVIDIAは継続的にGPUの性能向上に注力し、「GeForce RTX 40 シリーズ」などのハイエンドGPUを提供しています。

GPUはもともとグラフィックス処理に特化していましたが、その高い処理能力からAI分野にも進出しました。NVIDIAはこれに対応。「NVIDIA CUDA」や「NVIDIA TensorRT」などのソフトウェアを開発し、AI開発者に向けたツールキットを提供しています。

また、GPUを活用したAI向けのハードウェア製品も展開し、その革新的なアプローチは多様な産業に影響を与えています。

 

NVIDIAの事業領域を見てみましょう。NVIDIAは、GPU技術の進化とAIの急速な発展を背景に、幅広い事業領域で活動しています。その中でも、「NVIDIA GeForce NOW」はクラウドゲームの分野で注目を集めています。このサービスでは、高性能なGPUがクラウド上で動作し、ユーザーは高品質なゲームをストリーミングで楽しむことができます。

これにより、パソコンやゲーム機を所有せずに、気軽に最新のゲーム体験を享受できる点が魅力です。

「NVIDIA Omniverse」は、メタバース分野への進出を果たしています。これは複数のソフトウェアやデバイスで共同作業ができるプラットフォームであり、リアルタイムでの3Dコンテンツ制作やシミュレーションが可能です。クリエイターやデザイナーが協力して仕事を進めるための新しい手段となっており、デジタルな協業環境の進化を示しています。

自動運転技術もNVIDIAの注力分野で、「NVIDIA DRIVE」プラットフォームはその中心的な存在です。自動運転車の開発者は、NVIDIA DRIVEを活用して、高度な運転支援システムや自律走行機能を組み込むことができます。この分野での技術進化は、将来的なモビリティのあり方を大きく変える可能性を秘めています。

 

GPUとAI技術の融合

NVIDIAは、GPUの高い並列処理能力を活かし、AI技術の発展に寄与しています。AIコンピューティングにおいては、NVIDIAのGPUがその高い計算性能によってディープラーニングや機械学習のモデルトレーニングを効率的に行えるため、研究機関や企業で広く採用されています。その中でも「NVIDIA DGX」は、AI研究や開発において必要なハードウェアリソースをまとめて提供するプレミアムなソリューションとして評価されています。

AI技術の進化において、NVIDIAは「エンタープライズ向けAIの最先端技術」を提供しています。これは、GPUによる高速なAI計算能力とディープラーニングのアルゴリズムが組み合わさったAIプラットフォームであり、企業が従来の計算速度を大幅に上回るスピードでAIを活用できる環境を提供しています。

NDIVIA

NVIDIAは革新的な生成AI技術を開発している

 

近年、NVIDIAは生成AI技術の先駆者としても注目を浴びています。生成AIは機械学習の一分野であり、大量のデータから特徴やパターンを学習し、新しいデータを生成する手法を指します。NVIDIAはこれを活用し、「NVIDIA StyleGAN」や「NVIDIA GauGAN」、「NVIDIA Maxine」などの革新的な技術を開発しています。

「NVIDIA StyleGAN」は、人物や動物、風景などの写真に似た画像を生成する技術であり、驚くほどのリアリティを持った合成画像を生み出します。これにより、映画やゲームの制作において、現実感のあるキャラクターや背景を効率的に生成することが可能になります。「NVIDIA GauGAN」は、スケッチに色を塗るだけで写実的な画像に変換する技術であり、クリエイターにとって直感的なアート制作を支援します。

一方、「NVIDIA Maxine」は、ビデオ会議やストリーミングなどで、顔や声などの特徴を変更したり、品質を向上させたりする生成AI技術です。これにより、リモートワーク環境でのコミュニケーションをよりリアルかつ効果的に行うことができます。生成AI技術の進化は、デジタルコンテンツの創造性と表現力を新たな高みに押し上げつつあります。

 

NVIDIAの受賞歴と展望

NVIDIAの創業者社長兼CEO のJen-Hsun Huan氏(2023年5月29日、台湾・台北にあるComputexでの基調講演)

 

NVIDIAの卓越した技術力は世界中で高く評価され、多くの賞を受賞しています。特に、AI分野での受賞歴は顕著であり、2018年には「AI Breakthrough Awards」で「Best AI Hardware」を受賞。同年には「Data Center Solution Provider of the Year」にも輝き、データセンター分野での強みを示しました。2019年には、「HPCwire Readers’ Choice Awards」で「Best AI Product or Technology」を獲得するなど、その技術力の高さが確認されています。

今後の展望では、NVIDIAはAI技術の進化において、さらなるリーダーシップを発揮することが期待されています。先進的なテクノロジーを提供する企業として、NVIDIAはますます深い影響力を持ち、医療、教育、エンターテインメントなど、さまざまな領域で新たな可能性を切り拓くことでしょう。

NVIDIAは、その半導体技術とAI分野における先進的な取り組みによって、現代のコンピューティング環境において不可欠な存在となっています。GPUとAI技術の融合、生成AI技術の進化、多岐にわたる事業領域の拡大は、NVIDIAがこれからも革新的なソリューションを提供し続けることを予感させます。AI時代を切り開くけん引役として、NVIDIAはその存在感を一層際立たせています。

(日本一背の高いITジャーナリスト 久原健司)

 

プロフィール

久原健司(くはら・けんじ)

株式会社プロイノベーション代表取締役/日本一背の高いITジャーナリスト

IT企業を経営する傍ら、“日本一背の高いITジャーナリスト”として、さまざまなWebメディアでの執筆や、ITやDX、AIに関する講演会を開催。受講者のITリテラシーに合わせて、わかりやすく内容を伝えることができると、人気だ。また、母校の東海大学で特別講師として、定期的に授業を行っている。

オウンドメディア「イノベーションエクスプローラーズ」(https://iexplorers.jp/ )も好評。

 

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