【塚本俊太郎の金育 第1回】はじめの一歩

子どもから大人まで、今、「金融教育」が注目されています。

現代社会は、誰もがさまざまな金融商品・サービスと関わりをもつようになり、お金とうまく付き合っていくことが求められる時代です。金融リテラシーを身につけることは、わたしたちが自分自身でより安心かつ豊かな生活をお金の面で作っていくことにつながっていきます。

これからお金について学んでみようというみなさん! さあ、「金育」のはじめの一歩を踏み出しましょう!!

お金は上手に工夫して使うことが大切 【第1回】学校で教わる金融教育とは?

高校での金融教育が2022年4月から拡充されたことが話題になりましたね。

それまで子どもたちへの金融教育は、お金の役割や歴史を学びつつ貯金の大切さを教えたり、社会で多重債務問題が起きると消費者保護に力を入れたりするなど、時代とともに変化してきました。

このコラムの第1回では、今、学校で教わる金融教育はどのような内容なのかについて、私の経験を交えながら取り上げていきたいと思います。

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学校で教わる金融教育って、どんなもの?

学校で教わる金融教育って、どんなもの?

家計管理、ライフプランニング、そしてお金の使い方、貯め方・増やし方

私は2022年3月まで金融庁の金融教育担当として、金融経済教育指導教材の作成に携わってきました。今回拡充された金融教育は、高校の家庭科を中心に、①家計管理②ライフプランニング③資産形成——という3つの柱を学ぶという内容になっています。

金融教育という教科はなく、家庭科で学ぶという点は意外だと感じられるかもしれませんね。でも、じつは家庭科は子育て、キャリア形成、老後など、生活や人生に必要なことを学ぶ教科なので、そこでかかるお金について学ぶのは自然なことなんです。

 

具体的な内容ですが、

まず、毎月の収支をプラスにしてお金を貯められるようになりましょう(家計管理)。次に、将来の人生プランを描いて、どんなものにお金がかかるかを知りましょう(ライフプランニング)。

必要なもの(ニーズ)と欲しいもの(ウォンツ)を知り、お金のかしこい使い方を知りましょう。そして、お金の貯め方・増やし方では、預金、株式、債券、投資信託、保険などの金融商品を組み合わせて資産を形成しましょう――

というものです。

実践!「うんこお金ドリル」の答えはひとつではない!

では、高校以外の金融教育はどうなっているのでしょうか。中学校ではここ2年ほどでキャッシュレスについて学ぶようになりました。キャッシュレスは便利ですが、つい使いすぎてしまうという問題があるので、注意点も知ったほうがよいということで紹介されています。

同じように、クレジットカードやリボ払い(リボルビング)についても、金利という手数料が高く返済額が思ったより大きくなることや、使い過ぎると返済が難しくなるという観点を取り上げています。

小学校では、おこづかいの使い方や買い物の時のおつりの出し方などを学んでいます。私が金融庁に勤務していた時、小学生向けに、金融庁と出版の文響社がコラボして「うんこお金ドリル」を作りました。

「うんこドリル」シリーズは、漢字ドリルなどが有名になりましたが、他にもさまざまなシリーズが出ていて、その“おかね版”となります。生活編と経済編で7問ずつ問題があるのですが、正解は一つではないようにしています。というのも、何が正解か間違っているかということは、家庭ごとのルールや子どもの年齢で変わってくるからなんですね。

例えば、小学校では友だちのあいだでお金の貸し借りを絶対にやってはいけないと教えているのですが、高校生になって財布を落としてしまって、帰りのバス代がないから家に帰れない、という場合は貸してもいいと思うんです。

何がベストな解決法かというのは、その状況や年齢によっても変わります。このドリルの中にある題材を使って、親子間やクラス内で考えるきっかけになってくれればと思っています。

このうんこお金ドリルは、インターネット上で見ていただける(金融庁×うんこドリル うんこ おかねドリル 全年齢対応 | うんこドリル公式 (unkogakuen.com) )ようになっているので、ぜひ見てみてください。

 

私は今、中学・高校や、イベントなどで金融教育に携わっていますが、なるべく子どもや生徒たちの身近なテーマで、お金について考えてもらえるような内容を心がけています。

例えば、今教えている私立の中高一貫校では、学年全員が海外に一定期間留学するプログラムがあるのですが、現地でのおこづかいやおみやげ代について、生徒自らが作成した予算を、親にプレゼンして交渉してもらうことになっています。

留学中に何らかのアクティビティに参加するのであれば、それが自分にとって支払う金額に見合う価値があるかどうかを考えて計画しましょう、と教えています。

例えば、留学中にお金使わずに、ずうっと滞在先の家に閉じこもってたら留学している意味がないですよね。親としても、せっかくですから海外に行ったときにしかできない経験をしてほしいと思っているはずです。

こうしたプログラムは、生徒たちはかなり大変だと思いますよ。おこづかいの予算が高すぎても、仮に少なくても、親を説得しなければならないのですから。

さらに、帰国後には予算と実際に使った金額の差額を調べてもらいます。為替の影響や日本と海外で物価が違うことを考慮することも併せてレクチャーするので、かなり実践的な内容になっていると自負しています。

このように、子どもたちの金融教育は近年少しずつ拡充されつつあります。

 

では、学校をすでに卒業してしまっている大人は、どのように金融リテラシーを身につければいいでしょうか? 高校生が学ぶ内容の中にも、大人が知らないことや有効なものもたくさんあります。

次回では、大人の金融教育について考えていきたいと思います。

(塚本俊太郎)

プロフィール

塚本俊太郎(つかもと・しゅんたろう) 金融教育家 塚本俊太郎ホームページ
1994年、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論を卒業。20年以上、外資系運用会社で勤務したのち、金融庁の金融教育担当として高校家庭科の金融経済教育指導教材や小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在は金融教育家として、金融リテラシーや資産形成について講演活動などを行っている。
2023年3月期 Eテレ「趣味どきっ! 今日から楽しむ“金育”」講師。
YouTube「塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル」
日本金融教育推進協会理事。グリーンモンスター株式会社顧問。日本CFA協会執行理事。NewsPicks ProPicker。

 

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