【塚本俊太郎の金育 第5回】投資行動のタイミングはいつがいい?

前回 、米金融大手のバンガードで働いていたときの経験をお伝えしました。バンガードは、お客様に長期・分散投資の大切さについて頻繁に情報発信しており、それがいわば投資教育になっていました。

お客様がだんだんと長期・分散投資の大切さを理解していき、市場が下がってる局面でも多くの資金が引き出されることはなく、「結果的に大きな資産を築くことができた」と満足される場面に遭遇しました。私が今、金融教育という分野に携わっているのも、この時に教育の大切さについて実感したからということがあります。

さて、今回のコラムでは、投資行動のタイミングについて、投資のしくみを交えながら説明したいと思います。

 

市場予想は当たらない!?

投資を始めるタイミング、つまり買いどきや売りどきを悩む人は結構いらっしゃると思います。「良い売買のタイミングがあったら教えてください」と聞かれることもありますが、私は、「基本的に市場の動きによって売買のタイミングをつくらないほうがいい」と思っています。というのも、市場の先行きは誰も読めませんし、市場予想も当たることのほうが稀だからです。

例えば、積立投資であれば毎月決まった金額を淡々と買っていき、逆に取り崩す際には毎月決まった金額を淡々と売っていきます。運用中の資産を売る時も、「株価が高くなったから」とか、逆に「資産残高も大きくなったから、きょう売ろう」ということではなくて、資金が必要になったタイミングで必要な金額を売るのです。

 

そもそも、投資とは何かを考えると、例えば株式投資というのは、自分のお金を会社に提供して、それを会社が使い、新しい価値を生み出して、その価値が投資家に還元されるという仕組みです。

たとえ投資する人が「1か月で儲けたい」と言っても、企業の経済活動というのは1か月では結果が出ないものですよね。なので投資のスタンスも、企業が資金を使って経済活動をしていくという長いスパンで考えるべきだと思うのです。

 

投資、投機、ギャンブルの違い

投資を語るときに、投機とギャンブルとの違いについて「期待値」の観点でお話しすることがあります。期待値とは、将来得られる結果の平均値のことで、これが投資はプラス、投機はプラスマイナスゼロで、ギャンブルはマイナスです。

先ほどもお伝えしましたが、株式投資は基本的には新しい価値を生み出すためにお金が使われますし、会社はちゃんと利益が出るように運営されていく仕組みになっています。1社だけだとうまくいかないこともありますが、多くの会社に分散投資をすればプラスの期待値の恩恵を受けられると思います。

 

投機について見てみると、短期的視点で価格だけを見て安く買って高く売ろうとするだけなので、基本的に何も新たな価値を生み出しません。株式であっても、短期で売買して100万円を1億円にしましたというYouTuberが出てきたりしますが、その裏側には合計で1億円負けた人がいるということで、期待値はプラスマイナスゼロです。

ギャンブルの代表的な例として競馬を取り上げてみましょう。馬券の購入金額が集められて、そこから例えば手数料30%が引かれて、残りの70%の資金が馬券がハズレた人から当たった人に移動するという仕組みです。この場合、期待値はマイナス30%です。一部、当たる人もいるかもしれませんが、圧倒的に多数の人がハズレるという仕組みです。

 

投機とギャンブルはエンターテイメントでやるのはいいですが、それで大儲けすることはかなり大変です。将来のために自分の資産形成をしていくには、期待値がプラスの投資、つまり株式投資など「新しい価値を生み出す活動」にお金を使うべきではないでしょうか。

投資と投機とギャンブルを同じようにとらえてしまう方もいますが、「新しい価値を生み出すものか」という点が違うということをお伝えしたいと思います。

次回は、投資の非課税制度として人気上昇中の「NISA」について、ご紹介したいと思います。

(塚本俊太郎)

プロフィール

塚本俊太郎(つかもと・しゅんたろう) 金融教育家 塚本俊太郎ホームページ
1994年、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論を卒業。20年以上、外資系運用会社で勤務したのち、金融庁の金融教育担当として高校家庭科の金融経済教育指導教材や小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在は金融教育家として、金融リテラシーや資産形成について講演活動などを行っている。
2023年3月期 Eテレ「趣味どきっ! 今日から楽しむ“金育”」講師。
YouTube「塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル」
日本金融教育推進協会理事。グリーンモンスター株式会社顧問。日本CFA協会執行理事。NewsPicks ProPicker。

 

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