【第10話】総資産経常利益率を研究しよう ススム先生の「タイパ決算書分析 」塾 

 

カブオ君、マナミさん、「タイパ決算書分析」塾、第10回です。日経平均株価は1000円下がったり900円上がったりしてバタバタしていますが、長い目で見ると珍しいことではないですよ。
さて、極洋に戻りましょう。マナミさん、極洋の株価はどうですか?

 

極洋の株価はどうなっている?

 

株価は3600円(2024年4月下旬~5月2日)あたりをうろうろしています。株式の希薄化で3500円まで下げて、下げ過ぎの反動や期待で3800円まで上がって、その後3600円に下がって落ち着いている、という感じです。

 
 

3月決算はまだ出ていませんが、足下のPER(株価収益率)は7.6倍ですから市場の評価は甘くないですね。「自己資本厚くして中長期成長に備えている」という見方もありますが、公募の効果について市場は確信に至っていないという感じでしょう。
さて、決算書分析に戻りましょう。わかりやすい計算式として、ぜひ「総資産経常利益率」を覚えておいてください。
計算式は簡単で
総資産経常利益率(%)=経常利益÷総資産
です。
分母の総資産は期首と期末の平均で計算したほうが良いですが、タイパ的には期末の総資産でもよいでしょう。総合的な収益性の尺度で、経営の収益性と効率性の両面を示す指標ですよ。

 
 

どの程度の水準が良いのですか?

 
 

会社の規模や業種にもよりますが、製造業だと4%~6%、非製造業だと3%~5%が平均的なところだと思います。ざっくりですが、6%を超えると優良可の「良」ではないかな。
カブオ君、極洋のケースを計算してみてください。時系列で。

 
 

はい! 時系列で計算します! と思いましたが、財務ハイライトに載っていました。
19年3月期4.0%、20年3月期3.2%、21年3月期4.3%、22年3月期5.6%、23年3月期5.9%です。まさしく平均的ですね。

 
 

う~む。社歴の割に物足りない感はありますが、少しずつ上昇している点は評価できますね。この総資産経常利益率は、売上高を介して分解できます。やってみてください。

 

「売上高経常利益率」は収益性を計る尺度

 

えっと、
総資産経常利益率=(経常利益÷売上高)×(売上高÷総資産)
ですか?

 
 

素晴らしい! 前段の(経常利益÷売上高)は「売上高経常利益率」と呼ばれます。何
を表していると思いますか? 単位は「%」です。

 
 

売上高に対する利益だから、利益性? 利幅?

 
 

そうですね。収益性を計る尺度とされていますよ。一般的に高いほど良いですが、そうですね。収益性を計る尺度とされていますよ。一般的に高いほど良いですが、平均
すると4%~6%あたりでしょうか。
では、後段の(売上高÷総資産)は「総資産回転率」と呼ばれるのですが、何を表して
いますか? 単位は「回」です。

 
 

回転率? 難しいな。資産に対する売り上げだから、同じ資産なら売り上げが大きいほ
ど良いし、同じ売り上げなら、資産が少ないほうが良い……。バイト先の居酒屋でも夜は3回転とか言っていて、店長は回数が多いほど喜んでいる。

 
 

意味はちょっと違う気もしますが、効率を表しています、か。

 
 

そのとおり! こちらも業種によって差がありますが、ざっくりで1回~1.5回くらいが
平均的かな……。

 
 

要するに、総資産経常利益率を高めるには、売上高経常利益率という収益性を上げるか、総資産回転率という効率を上げるか、ということですか。二刀流、両方高いと文句なし……?

 
 

両方高いほうがいいか、というのは微妙です。業種やビジネスモデルの特徴が出ますね。利幅の高い事業をじっくり仕上げるのか、薄い利幅をたくさん売るのか。ざっくりですが、総資産経常利益率6%=売上高経常利益率5%×総資産回転率1.2回
が優良可の「良」と、自分なりの指標を持っておくといいと思います。
マナミさん

 
 

先生は「ざっくり」が好きですね。

 
 

こう言っちゃなんですが、だいたいの物事はざっくりでいいんです。タイパでしょ!
さて、カブオ君……

 

極洋の売上高経常利益率と総資産回転率を読む!

 

はいはい。極洋で、時系列ですね。
売上高経常利益率の推移は、19年3月期1.7%、20年3月期1.3%、21年3月期1.9%、22年3月期2.7%、23年3月期3.0%です。
20年3月期を底にして収益性は高まっているんですね。
総資産回転率の推移は、19年3月期2.3回、20年3月期2.3回、21年3月期2.3回、22年3月期2.1回、23年3月期2.0回です。
平均値より高いですが、徐々に低下しています。

 
 

マナミさん、併せて考えると?

 
 

2019年から20年にかけて、総資産経常利益率が低下した。原因は売上高経常利益率の低下だった。一方で、総資産回転率は安定していた。そもそも収益性の低さは課題でした。
そこで多少、効率性は低下するものの収益性を上げる努力をした結果、総資産経常利益率は徐々に上昇した……。そう想像します。

 
 

推測にすぎませんが、良い洞察ですね。販売数量は減るものの、利幅の大きい製品に力を入れたのかもしれませんね。

 
 

24年3月期はどうかな? このまま伸びるかな?

 
 

経営はそんなに簡単じゃありませんよ。食品の値上げは浸透していますから、前段の売上高経常利益率は改善しているかもしれません。決算発表を待ちましょう。

 
 

きょうの講義は久しぶりに勉強した! という気がするのですが、そもそも総資産経常
利益率って投資に役立つんですか?

 
 

おっ、良い疑問ですね。次回は復習も込めて、他の指標と併せて学習しましょう。

 
 

はいっ!

 

 

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