ネット証券の株式の売買手数料、やっぱり”ゼロ”がいいの?

ネット証券の売買手数料「無料化」の流れ “一線画す”マネックス証券 適正水準であれば「払ってもいい」という選択はありか?

インターネット証券が、国内株式の売買手数料の無料化をめぐって揺れている。無料化を進める、ネット証券最大手のSBI証券と第2位の楽天証券に対して、「(売買手数料をゼロにするのには)無理がある」というマネックス証券とで、対応が割れた。

SBI証券と楽天証券が「無料化」(信用取引を含む)を発表。これを受けて、マネックス証券は2023年9月5日、「現行の国内株式手数料体系を現時点では維持する」と追随しないことを発表した。

売買手数料の無料化の背景には、少額投資非課税制度(NISA)の拡充があるという。新NISAの導入を来年1月に控えて、株取引への参入増加が見込まれ、現役世代の取り込みを狙う証券会社間のサービス競争は一段と激化しそう。

ただ、一方で「体力のない証券会社は顧客を奪われ、再編の引き金になる」と予想したり、「消耗戦」を危惧したりする声がある。

 

「手数料ゼロは、いびつな状況が発生しうる」

マネックスグループは2023年9月4日、東京・六本木で事業戦略説明会を開催。その席上、同社の代表執行役会長の松本大氏は、SBI証券や楽天証券が相次いで国内株式の売買手数料を無料化する動きについて、記者からの質問にこう答えた。

「アメリカには『Payment For Order Flow(PFOF)』という顧客向け手数料をゼロにしても収益を得る源があるが、日本にはそれがない。アメリカと日本とでは違う収益構造で、その中で日本株(の売買手数料)をゼロにするというのは、いびつな状況が発生しうるのではないか。ちょっと無理がある。どう考えても、赤字になる部分がある」

インターネット売買の広がり、ネット証券の台頭とともに、国内株式の売買手数料は値下がりしてきた。とはいえ、その手数料が証券会社の営業収益に占める割合は決して小さくない。それが“赤字覚悟”となると、「どこか他の部分で稼がないといけなくなる」(松本会長)。

 

マネックス証券は2020年から顧客の資産形成・資産運用を支援の対価として報酬を得る「アセマネモデル」を推進している。内製化などで多様なサービスやツールを提供しつつ、その対価として手数料や使用料を得るというビジネスモデル。しっかり稼ぎ、顧客に還元する“Win-Win”の関係を築いていくという。

マネックス証券の清明祐子社長は

「コストを控除した後の顧客の運用資産が増えることにコミットし、付加価値ある高品質な商品・サービスを提供する、『アセマネモデル』を継続します」

と話し、「無料化には追従しない」ことを表明した。

 

「安いほうがいい」に決まってる?

一方、SBI証券は9月30日から、楽天証は10月1日の注文分から国内株式の売買手数料を無料化する。その背景には、「新NISA」の導入を来年1月に控えて、株式投資に興味を持つ人や、実際に取引へ参入しようという人の増加が見込まれることがある。

ただ、NISA口座はすべての金融機関を通じて一人一口座しか開設できない。売買手数料をゼロにすることで、取引を繰り返す人でも利益を上げやすくする狙いがある。

もちろん、個人投資家にとって手数料は安いに越したことはない。しかし、マネックス証券の清明祐子社長は、資産形成をするうえで「日本株の手数料だけを無料化すること」に疑問を、こう投げかける。

「例えば、売買手数料が無料だからといって、しなくてもよい取引を何度も繰り返して、それによって資産が減ってしまっては意味がないですよね。

資産を増やすにあたって、日本株だけではなくポートフォリオをよくしていくには、グローバル分散の米国株や時間分散の投資信託の積立、新NISAなどもうまく使う必要があるのではないでしょうか。重要なのは、お客様の資産が増えていくことです」

 

では、個人投資家はどちらを選べばよいのだろうか――。

正解は、「どちらでもいい」のではないか?(ただし、NISA口座はどちらか一つの口座しか選べない)。デイトレードのような取引をする人は売買手数料が無料のほうがいいかもしれないし、日本株だけでなく、米国株や投資信託などのさまざまな投資商品の取引コストを上回る利益を得られるのであれば、きちんと手数料を払ってもいいという考え方は”あり”だろう。どちらの口座を使っても、使い方次第のようだ。

例えば、無料配送の宅配便事業が成り立たず、適正な価格を求めるようになったように、どんな商品・サービスにも価格はあるし、“いびつな”取引は企業の生き残りにかかわる。そう考えると、“正解”は、その人の考え方にあるのかもしれない。

(カブライブ!編集部)

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