【第2話】決算書はどこにある? ススム先生の「タイパ決算書分析」塾

100ページ超もの“ゆうほ”にうんざり 「タイパ」で攻略するには?

 

さて、“ゆうほ”ですが、銘柄を選ぶのも大変なので、東証プライム市場の一番手、「極洋」を材料に勉強しましょう。ちなみにコード番号は1301です。

 
 

ホームページを開いてみますね。
「極洋」って、魚の会社か。冷食や回転寿司でお世話になっているぞ。キャリア採用もやっているのか、待遇はどうかな?

 
 

カブオ君、そうやって興味を持つことはとても大切ですし、会社の姿が見えてくることもありますけど、タイパですよ。寄り道はやめましょう。まずはIRを開いて、IRライブラリーに「有価証券報告書」がありますね。これをクリックしましょう。

 
 

四半期報告書やら臨時報告書やら、いろいろありますね。

 
 

いろいろある中から、まずは年に一度の有価証券報告書を見ましょう。3月決算なら、6月の下旬に公開されることがほとんどです。

 
 

開きました。うわ、100ページ以上もありますよ……。ぞっとするなぁ。

 
 

先生、【経理の状況】に「連結財務諸表等」「財務諸表」というのを見つけました。でも、先生、“ゆうほ”にたどり着くまでが大変ですし【経理の状況】を開くのも面倒で全然タイパじゃないです。

 
 

正直、飽きてきました。ここから分析なんてやる気がしません。

 
 

気持ち、わかります。じつは“ゆうほ”だけ見たいのであれば、金融庁の電子開示システムである「EDINET」というサイトから検索するのが最も早いですから、試してみてください。
ただ、タイパとしては、まずIRに載っている「財務ハイライト」や「ビジネスレポート」、「個人投資家のみなさまへ」などを見るといいかもしれません。会社のことを多くの人や株主に知って欲しいため、わかりやすい資料を作っているんです。

 
 

先生、公開に積極的でない会社は、自社に自信がないってことですか?

 
 

そうとも断言できませんが、時代遅れというか、逆行している印象になるかもしれませんね。「極洋」は歴史ある企業ですが、どんどん変わっていることがわかります。

 
 

ほんとだ。「極洋」って第100期なんですね。すごいなあ。

 
 

でも、先生。会社にとって良いことしか公表しないということはないんですか?

 
 

そうですね。そういう会社の気持ちもわからないではありませんが、数字が事実を表しますし、開示のルールもありますから良い事だけを公表することは難しいでしょうね。夢を語り、強気の計画を策定することもありますが、それこそアナリストや機関投資家などに、計画や目標達成の可能性について冷静に分析されますよ。

 
 

厳しい世界なんですね。ウソでかためた婚活とは大違いだなぁ。

 
 

マナミさん、相当盛ってますもんね。

 
 

ほっといてよ!

 
 

当たり前と言えば当たり前ですけどね。
では、次回はタイパ! ということで、わざわざ会社が作ってくれている「財務ハイライト」を材料に、具体的な分析を行うことにしましょう。

 
 

楽しみですっ!

 

 

プロフィール

井上 享(いのうえ・すすむ)

日本公認不正検査士協会認定 公認不正検査士(CFE)

1982年に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、大阪銀行(現:関西みらい銀行)に入行。退行後、会計知識、法律知識、犯罪心理学、調査手法の4つの分野の試験に合格し、かつ米国公認不正検査士協会の認定よって与えられる公認不正検査士(CFE)の資格を取得。金融関係の不正行為・不祥事を防ぐべく、活動している。

主な著書に「銀行不祥事の落とし穴 第1巻、第2巻」、「中小企業融資自己査定Q&A」、「説明義務・勧誘ルールと苦情対応事例集」(いずれも、銀行研修社)。現在、月刊銀行実務(銀行研修社刊)に「金融不祥事 転落の死角」、金融経済新聞に「STOP! 不祥事!」を連載中。 ドラマ「幸せになる3つの買い物」監修、映画「シャイロックの子供たち」銀行監修。 兵庫県神戸市出身。

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