【第2回】「世界一」の規模の市場 いきなり米国株投資って大丈夫?

ニューヨーク株式市場の上場審査は世界で最も厳しい

今回は、米国の株式投資の歴史について学んでいきましょう。

米国に初めて証券取引所が設立されたのは1792年5月17日のニューヨーク証券取引所です。24人の株式仲買人が68ウォール・ストリートにあったスズカケノキの下で証券取引所創設の協定に署名し、取引所が設立されました。

この協定は「すずかけ協定」と呼ばれています。

 

米国の金融・経済の舞台「ウォール街」

日本に証券取引所が誕生したのは1878(明治11)年5月ですから、日本よりおおよそ100年早かったことになります。

ニューヨーク証券取引所のある「ウォール街」は、米国の経済関係のドラマや映画などの舞台となりますが、取引所の建物が現在の場所に竣工したのは1903年です。

私たちが米国株式の売買を行ううえで知っておく必要があるのは、このニューヨーク証券取引所とナスダック(NASDAQ)です。

 

ナスダックは全米証券業協会により1971年に設立された証券取引所で、世界で初めての電子株式市場です。

株式売買の風景といえば、取引所にいる仲買人が手でのサインによって売買をする様子など立会場の様子が想像されますが、ナスダックはコンピュータシステムのみで取引されるため、立会場がありません。

立会場は現在でもニューヨーク証券取引所にはありますが、インターネット売買の拡大で、立会場は閉場されています。ちなみに、東京証券取引所も1999年4月30日にすべての取引がシステム化され、立会場は閉場されました。

 

上場銘柄の多くが世界を代表する企業

ニューヨーク証券取引所とナスダックの特徴をおおまかに言えば、ニューヨーク証券取引所は、世界を代表するグローバルな企業が多く上場している取引所で、その上場審査は世界で最も厳しいと言われています。

上場銘柄の多くが世界を代表する企業ですから、大型の優良株式が多く、世界最大規模の時価総額を誇っており、米国だけではなく、世界経済の中心として世界の株式市場をリードしています。

一方、ナスダックは新興企業向けの株式市場として開設され、成長力のあるIT(情報技術)やハイテク企業が数多く上場しています。上場企業にはアマゾンやアップル、グーグルを運営するアルファベットなど、日本でもお馴染みの急成長企業があり、すでに時価総額はニューヨーク証券取引所に次ぐ、世界第2位の規模にまで急拡大しています。

 

当初、ニューヨーク証券取引所は「重厚長大」のオールドエコノミーに属した企業、ナスダックは「短小軽薄」のニューエコノミーに属する企業という色合いが強かったが、近年ではその色合いは薄れています。

わたしたちが米国株に投資を行う時には、このニューヨーク証券取引所か、ナスダックに上場している企業に投資を行うことになります。

次回は、ニューヨーク証券取引所とナスダックの仕組みの違いなどについて、見てみることにしましょう。

プロフィール

鈴木 透(すずき・とおる)

経済ジャーナリスト / カブライブ! 編集長

ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。「鷲尾香一」の執筆名で、マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材、執筆活動を続けている。

2023年9月から、カブライブ!編集長

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