【塚本俊太郎の金育 第4回】「インデックス投資信託」という選択

前回(【金育 第3回】収入のどのくらいを貯めたらいいの?) 、私が以前働いていた、アメリカの大手資産運用会社バンガード日本支社での経験が、「長期・分散投資」という投資方法への考え方に大きく影響したとお伝えしました。

バンガードは、1990年代に米国で初めてインデックス投資信託をつくった会社で、それまでの米国では業績の良い会社を選んで投資をする、「アクティブ運用」の投資信託が中心でした。

バンガードの創始者、ジョン・ボーグル氏はさまざまな市場分析をする中で、アクティブ運用は、市場インデックスにはほとんど勝てないことを発見。そこから、市場全体に投資するインデックス投資信託をつくったのが始まりです。

 

バンガードでの経験がもたらした考え方

 

米バンガードは、創業以来ずうっと、このインデックス投資信託を主力商品として展開してきました。市場が下落した際も、「不安から売らないように。そもそも長期投資が前提ですし、将来は価格も戻るので、下落時も投資を継続するべきです」とお客様にお伝えしていました。いわば、投資教育もあわせてしてきたのです。

結果的に、長期・分散運用により資産形成が成功した多くのお客様からバンガードは評価されるようになっていきました。

 

私の個人的な体験は、バンガード本社がある米国フィラデルフィアに出張に行ったときのことです。本社近くのレストランで食事中にウェイトレスの女性と話す機会があり、バンガードの話題になりました。

その女性は、

「若い時からこの仕事をしてきて、バンガードのインデックス投資信託を買ったおかげで、子どもたちを皆、大学に通わせることができたし、これからの老後も安心して暮らせる」

と話してくれました。

ウェイトレスという仕事は、あまり給料は高くないかもしれませんが、若い時から資産形成を始めて、実際に教育資金や今後の老後資金が賄えたという話を聞いて、「やはり長期・分散投資で、コツコツ運用するという考え方は間違っていないんだ」と実感した出来事でした。

 

現在、バンガードは日本から撤退をしましたが、ジョン・ボーグル氏は、いくつか本を執筆して投資についての名言を残しているので、興味があれば読んでみてください。

 

資産を増やすには=投資金額×利回り×投資期間で考える

  • 資産を増やすには=投資金額×利回り×投資期間で考える

資産を、どう増やしていくのか――。それは、「投資金額 × 利回り × 投資期間」で将来的にいくら増えるか決まります。たとえ資金が少額でも、若いうちから投資を始めて投資期間を長くできれば、増える可能性が大きくなります。また、遅く運用を始めたとしても投資金額が大きければ、やはり増える可能性も大きくなります。

ただ、利回りは市場が決めていることなので、自分たちではコントロールできません。コントロールできるのが、投資金額と投資期間なので、みなさんはご自身の状況に応じて、この2つを大きくしていくことを意識していただけたらと思います。

最低20年は運用しよう!

例えば、60歳でインデックス投資信託を始めたいという場合ですが、遅いということはなく、平均余命から見れば、あと20年もしくはそれ以上に運用できます。投資期間を長くすることも金額を増やして始めることも、またその両方も可能です。

ただ、過去の事例を考えると、最低20年は運用してほしいものです。というのも、運用できる期間が5年くらいだと、もし景気が良い時から悪い時に切り替わるタイミングでは、減ってしまうこともあるからです。しかし20年という期間でみれば、過去はだいたいプラスになりました。

景気のサイクルは10年で1回転すると言われており、それを2回転ほど乗り越えてきた結果、増えたということです。最低20年をめどに運用していただきたいと思います。

 

もう一つ、投資で参考になる考え方として、資金の運用先としての株式の割合を、「100-年齢」にするという考え方があります。例えば、60歳だったら100-60だから40%。自分の資金全体の40%を株式の比率にしましょうということです。30歳なら、70%が株式でもいいということになりますね。

ちなみに、私がオススメするインデックス投資信託も、株式に含みます。

 

私は、投資を手放しで勧めているわけではありません。一つの基準として、10年以内に確実に必要となる資金、例えば教育資金や住宅資金などは、元本を保証した預金などで保有しておくのが良いと思っています。それ以外の資金を、投資用の資金として考えてもらえればいいのではないでしょうか。

次回は、投資と投機とギャンブルの違いについて、考えてみたいと思います。

(塚本俊太郎)

【用語】インデックス投資

インデックス投資とは、株価指数などの市場の値動きを示す指数(インデックス)に連動した運用を目指す投資方法のこと。その市場を構成する複数の銘柄に広範な分散投資ができる。

アクティブファンド(ファンドマネジャーが投資する商品・銘柄を選定、投資割合を決めて運用する投資信託)と比べて信託報酬などの手数料が安い。よく目にするインデックスには、日経平均株価、米ニューヨークダウ30種平均株価などの株価指数のほか、債券指数、REIT(不動産投資信託)指数、コモディティ指数などがある。

 

プロフィール

塚本俊太郎(つかもと・しゅんたろう) 金融教育家 塚本俊太郎ホームページ
1994年、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論を卒業。20年以上、外資系運用会社で勤務したのち、金融庁の金融教育担当として高校家庭科の金融経済教育指導教材や小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在は金融教育家として、金融リテラシーや資産形成について講演活動などを行っている。
2023年3月期 Eテレ「趣味どきっ! 今日から楽しむ“金育”」講師。
YouTube「塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル」
日本金融教育推進協会理事。グリーンモンスター株式会社顧問。日本CFA協会執行理事。NewsPicks ProPicker。

 

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