新NISA調査 評価が高かったのは「非課税保有期間が無制限になること」

新NISAの特徴、メリット は?

2024年1月から、いよいよ新NISAがはじまる。テレビCMや交通広告、新聞・マネー誌では「急げ、急げ」「早く、早く」と、証券会社などが口座開設を煽っている。新NISAへの移行が実現すれば、年間投資枠や非課税保有限度額が拡大するほか、非課税保有期間や口座開設期間が無期限化、恒久化するなど、さまざまなメリットが見込める。

ざっくり説明すると、現行の「一般NISA」と「つみたてNISA」は一本化され、代わりに新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つに分かれる(「ジュニアNISA」は終了)。

「つみたて投資枠」は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に投資することができ、対象商品は現行のつみたてNISAと同じ。「成長投資枠」は、上場株式や、上場投資信託(ETT)や不動産投資信託(REIT)を含む投資信託などに投資できる、現行の一般NISAを引き継いだ。この2つの枠は併用が可能で、年間投資枠は「つみたて投資枠」で40万円→120万円、「成長投資枠」が120万円→240万円に拡大。現行のつみたてNISAで20年間、一般NISAで5年間ある非課税保有期間は、無期限になった。

現行のつみたてNISAで800万円、一般NISAで600万円の非課税保有限度額も、1800万円(成長投資枠は1200万円まで)に引き上げられた。

また、新NISAで保有している商品を売却した場合、その分の簿価金額(帳簿に記載された資産や負債の評価額)だけ、翌年に非課税保有限度額が復活して再利用することができる。例えば、新NISAで50万円購入した商品が倍の100万円になった時に20万円売却した場合、20万円のうち簿価金額は半分の10万円なので、翌年に10万円枠が復活して再利用できる。現行のNISAよりも、大きな金額を非課税で投資できるようになるため、その分、税制のメリットを多く受けられるようになるわけだ。

 

「現行NISAからロールオーバーできないこと」評価できない!

そんな新NISAについて、マネックス証券(東京都港区)が口座を保有している7380人(有効回答者数。うち、NISA口座の保有者は6987人)を対象に、調査(2023年11月25日~27 日)を実施。12月4日に発表した。

調査によると、新しいNISAの制度改正の内容への認知度(n=6987)を聞いたところ、「知っている」と答えた人は58%、「なんとなく知っている」が34%と、92%の人が認知しており、かなり高まった。一方、「ほぼ知らない」の7%と「初耳」と答えた1%の人を合わせた8%が「あまり認知をしていない」と答えていた。

次いで新NISAの改正内容を理解している個人投資家(n=6479)に、今回の制度変更を 10段階で評価してもらったところ、7以上の評価を付けた人は86%(評価「7」の15%と「8」の31%、「9」が14%、「10」の26%の合計)と、かなり好意的に受けとめられている。「評価6」が7%、「5」は6%、「3」と「4」がそれぞれ1%。評価「1」と「評価しない」はゼロ%だった。かなり好意的に受けとめられている。

新NISAで評価できるポイント(n=6479、複数回答)を聞いたところ、「非課税で保有できる期間が無制限になったこと」と答えた人が77%、「年間の非課税投資枠が増えること」が 71%と、高い評価を得た。一方、「評価できるポイントがない」と答えた個人投資家は 1%にとどまった。

その一方で、新NISAで評価できないポイント(n=6479、複数回答)を聞いたところ、「現行のNISAからロールオーバーできないこと」が51%と、評価できないポイントとして突出した結果となった。次に高かったのが「評価できないポイントがない」(17%)という回答だった。【図表1参照】

図表2 新NISAで評価できないポイント(マネックス証券調べ)

図表1 新NISAで評価できないポイント(マネックス証券調べ)

 

「投資額を増やす」と答えた個人投資家は52%!

新NISAの改正で、投資行動が変化しますか(n=6987、複数回答)と聞いたところ、「自分の投資行動がポジティブに変わると思っている個人投資家は62%と前向きな人が多かった。ネガティブに変わると思っている人は、今回の制度変更を評価できないと答えた人とほぼ同じ1%にとどまっている。「(投資行動が変わると)思わない」は22%、「わからない」は15%だった。

また、現行でNISA口座を保有している個人投資家(n-6766)のうち、「可能な範囲で投資額を増やす」と答えた人は52%だった。「年間の上限に達するまで増やす」という人も19%いて、合わせて71%もの個人投資家が増額を検討しているという。【図表2参照】

図表3 新NISAで投資額を変更しますか?(マネックス証券調べ)

図表2 新NISAで投資額を変更しますか?(マネックス証券調べ)

さらに、NISAを利用して投資をする際に重視すること(n=6766、複数回答)を聞いたところ、65%の個人投資家が「長期的に株価が上がりそうか」を重視していることがわかった。次いで、「インカムゲインが入るか」と答えた人が47%、「非課税枠で分散投資できるか」が30%と続いた。「株主優待がもらえるか」と答えた人も12%いた。

こうした回答から、マネックス証券は「しっかりと長期保有を目的として投資を行おうと考えていることが見てとれる」としている。

調査では、NISA口座を開設する先を選ぶポイント(n=6987、複数回答)も聞いた。それによると、「メインの証券口座であること」と答えた個人投資家が58%で最も多く、次いで「手数料」を重視していると答えた人が50%だった。【図表3参照】

新NISAでの取引手数料を無料としている証券会社も多いため、メインで利用している証券会社かどうかが重要なポイントになってくるようだ。

図表4 NISA口座を開設する先を選ぶポイント(マネックス証券調べ)

図表3 NISA口座を開設する先を選ぶポイント(マネックス証券調べ)

 

約半数がNISA口座を変更したい……

NISA口座は一つの金融機関でしか開くことができないこともあって、「どこの金融機関でNISA口座を開設しようか」と迷っている個人投資家は少なくないかもしれないが、約半数にのぼる51%(n=6766)の人が一度 NISA 口座を開いた金融機関から金融機関を変更したい、と思ったことがあることがわかった。「検討したことがない」と答えた人は49%だった。

「今まで変更したことがある」と答えた個人投資家は16%、「新NISAに向けて初めて変更した」人は7%で、合わせて23%の人が実際に金融機関を変更したことがあると答えた。

また、証券会社ではなく、銀行でNISA口座を保有している個人投資家は14%。「検討したことがある」という人を含めると、4分の1近い24%の人が「銀行でNISA口座を開設したいと思った」という。

一方、企業に対して(株主総会などで)企業価値が向上するような提案や提言を積極的に行うことを目的とした「エンゲージメント投資」に興味があるか(n=7380)と聞いたところ、40%の個人投資家が「知らなかった」と答えたものの、17%が「興味はある」と答えた。

マネックス証券は、「エンゲージメント投資という概念が60%もの個人投資家に浸透してきた」としている。【図表4参照】

図表5 エンゲージメント投資への興味(マネックス証券調べ)

図表4 エンゲージメント投資への興味(マネックス証券調べ)

 

 

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