日産、ホンダと経営統合へ 浮沈繰り返す1990年代以降の経営

みなさん、こんにちは。ペガゾです。2025年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

さっそくですが、本田技研工業(ホンダ)と日産自動車の経営統合のゆくえが注目されています。両社は2024年12月23日、経営統合に向けた本格的な協議をするために基本合意書を締結したと発表しました。共同で持ち株会社を設立したうえでホンダと日産のそれぞれが傘下に入ることで経営統合するとして25年6月に最終合意。26年8月の持ち株会社の上場を目指して、効率経営を進めるとともに先進技術の開発でも両社の連携を深めて競争力を高める狙いです。実現すれば世界3位の自動車グループが誕生することになります。

一方、発表日の記者会見で、ホンダの三部敏宏社長、日産の内田誠社長は共に対等な立場での経営統合であることを強調しましたが、日産の財務状況は気がかり。現時点で確定した情報はありませんが、日産の株主の変遷から、まとめてみました。

 

1999年、日産は仏ルノーと提携

日産自動車は1933年創業。長い間、日本の大手自動車メーカーとして国内企業による主導的な株主構造が維持されていました。特に1960年代から80年代にかけては、主要株主は日本の金融機関や産業グループが占めており、企業の経営権や意思決定は国内の伝統的な企業文化に基づいて行われていました。

この時期、日産の経営は比較的安定しており、トヨタ自動車やホンダと並ぶ国内の自動車メーカーとして強い競争力を誇っていました。ところが1990年代に入ると、日産は国内外での競争激化や経済環境の変動により、業績が悪化していきました。そのため、日産は経営改革を急務とし、外部資本支援を求める必要が生じました。

1999年、日産はフランスの自動車メーカー、ルノーと資本業務提携を締結。ルノーは日産の経営再建を支援するため、日産の株式を大量に取得しました。この年、ルノーは日産の株式を37.8%取得し、日産の最大株主となりました。併せて、カルロス・ゴーン氏が日産の最高経営責任者(CEOに就任したことも、日産の株主構造に大きな影響を与えました。

ゴーン氏の改革により、日産は急速に業績を回復させ、ルノーとのアライアンスは成功を収めました。しかし、この時期、日産の経営権の一部はルノーに集中しており、日本側の株主とのあいだで経営権に関する緊張が高まることもありました。

2002年、ルノーは日産の株式をさらに取得その後も少しずつ保有割合を増加させました。この時期、ルノーの持ち株比率は40%を超えることとなり、日産は事実上、ルノーの傘下に入ったかたちとなりま。日産経営へのルノーの影響力が強化されましたが、日産の経営陣は引き続き独立性を主張しながら、ルノーとのアライアンス関係を維持しました。

 

経営統合しかない?

ところが2018年11月19日、東京地検特捜部がゴーン会長(当時)を逮捕します。自らの報酬を有価証券報告書に少なく記載した罪と、日産の資金を不正に支出させるなどとした特別背任罪(会社法違反)で起訴しました。

この逮捕後、2020年代に入ると日産はルノーとの協力関係を見直し日産単独の経営戦略を強化する方向にシフトします。これに伴い、ルノーの株式比率を低減させました。20年代初頭の日産の株主構造は、ルノーが依然として大株主であり続けるものの、日産内部や日本の機関投資家、個人投資家の影響力が増している状況が続いていました

ちなみに、23年11月以降の出資比率は15%まで下がっています。

 

仏ルノーの出資比率の低下とともにその影響力が弱まったこともあり、本格的なEV時代の到来を前に日産はEVに活路を見出するようになります。しかし、日産が2024年11月7日に発表した24年4月から9月までの中間決算は、主力の米国市場での販売不振などが足を引っ張った結果、「本業のもうけ」を示す営業利益が前年同期比90.2%減の329億円。当期純利益も93.5%減の192億円という総崩れの状態になりました。

値引きに頼って新車を売るから、そのクルマの下取り価格が上がらず、中古車価格の下落を招き、さらに新車を値引きしなければならないという悪循環に陥ってしまったようです。

日産では経営の立て直しに向けて、世界で生産能力を20%削減して9000人を削減する方針を明らかにしました。

 

経営統合「うまくいくはずがない」ゴーン元社長

そして、ホンダとの経営統合へと進んだのです。これにゴーン氏は、日本外国特派員協会で開かれたオンライン会見で、「(日産の)今の状況を見るのはとても悲しい」としたうえで、「(経営統合が)うまくいくはずがない」と辛らつなコメントを寄せています。

さらに、

「ホンダと日産には何の補完性もない。両社は同じ日本企業であり、同じ分野で強い。どちらも非常に発達した技術を持っている。産業的な観点から見れば、重複はどこにでもある。だから、産業的には意味がない」

と、その理由を冷ややかに述べています。

経営統合の発表後、日産とアライアンスを展開しているルノーは、EV分野などの共同事業を継続する考えを明らかにしています。とはいえ、経営統合後の日産-ルノーのアライアンスのゆくえは不透明ですし、今後の大きな課題の一つです。

また、一部情報によると、日産が大株主である三菱自動車は、”ホンダ‐日産”の持ち株会社の傘下には入らない方向で検討を進めているといわれています。”ホンダ‐日産”との協業はもちろん、三菱自の経営のゆくえも気になります。

直近日産の業績がよくないなか今後の資本政策が非常に重要な局面に入っており、その動向が注目されます。

 

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