どうなる? 日本製鐵のUSスチールを買収 M&Aから「テーマ投資」を考えた
みなさん、こんにちは。
ペガソです。
今回は、日本製鐵のM&A(企業の買収・合併)のニュースから、今後の投資について考えてみたいと思います。
日本製鐵による米鉄鋼大手USスチールの買収計画は、2023年12月に発表されました。買収総額は約2兆円で、これは日本製鐵にとって過去最大級のM&Aとなります。
目次
買収の実現で日本製鐵は世界第3位に浮上
日本製鐵が、このM&Aを決断した背景は、国内市場が成熟して、今後の高い成長角度が見込めないなか、海外市場への進出を積極的に考えないといけないことが、主な理由だと考えています。また、直近でアメリカが安全保障を理由に輸出入にハードルを設けていることもあります。アメリカへの進出が難しくなってきており、買収を考えたと想像しています。
この買収が実現すると、日本製鐵とUSスチールの粗鋼生産能力は合計で8600万トンになり、日本製鐵は世界4位から3位に浮上する見込みです。また、日本製鉄が目指す年産1億トンに向けた、大きなステップにもなります。
しかし、この買収計画は米国内で反対の声が上がっています。全米鉄鋼労働組合(USW)や米有力議員の一部が反対を表明。次期大統領選挙の有力候補であるトランプ前大統領までが反対を表明しています。また、直近ではバイデン大統領も、「本買収案件を支持しない」との声明を出しています。
日本製鐵は、米国内での反対の声に対して、「(弊社には)技術の優位性があり、100%子会社なら技術を全部出せる。お金も(米国へ)持っていく。組合との関係はUSスチールが結んでいる労働協約を100%守る」と主張しています。
米大統領選に飛び火!? 買収のゆくえは……
日本製鐵のUSスチールへの買収が成立するかどうかは、まだわからない状況です。
米国規制当局の審査、USスチールの株主総会での承認、労働組合との交渉という3つのハードルが残されています。最悪のケースとしては、当局の承認が最終的に下りず、買収を断念せざるを得ない状況になることかと思われます。
今回、米大統領選を間近に控えていることもあり、この買収劇が政争の具として用いられしまったようです。そのことは残念に思います。ただ、M&Aの成功は、政治のタイミングにもよることを念頭に置くことも必要です。まして、鉄鋼や自動車といった国の基幹産業だったり、いわゆる大型の案件だったりすれば、なおさらです。
M&Aをめぐる「テーマ投資」を考えるときには、「政治」への関心もはらっていく必要もあるようです。
では、また!
【用語説明】テーマ投資とは……
特定のテーマの中から個別銘柄を選んだり、特定のテーマに関連する銘柄を組み入れられている投資信託(テーマ投資型投資信託)を選んだりして投資する方法。長期的に利益を上げると予想されるトレンドに重点を置く投資戦略。
プロフィール
ペガゾ
大学で金融政策を専攻。株式投資についても、個人でファンダメンタルズ分析をメインに行っていた。現在は金融業界で働いており、個別株は投資できないものの、引き続き情報収集を行っている。
「日本でも、個人投資家がもっと増えればいい」と思っている。