トランプ氏 vs ハリス氏 激戦の米大統領選、買われる米国株は?

まもなく、新しい米国大統領が決まります。

共和党候補のドナルド・トランプ氏か民主党候補のカマラ・ハリス氏か――。両者譲らず大接戦を繰り広げるなか、個人投資家が気になるのは株価の動向でしょう。

米大統領選直前、注目の米国株、セクターを予想してみました。

 

トランプ氏勝利ならば、エネルギーや軍需、金融セクター

 

日本貿易振興機構(JETRO)のビジネス通信(2024年10月31日付)によると、米大統領選予想で、「共和党候補のドナルド・トランプ氏の勝率が民主党候補のカマラ・ハリス氏を、やや上回る」と伝えています。

 ABCニュースは、選挙モデルによる分析で大統領選でのトランプ氏、ハリス氏の勝率を10月30日時点でトランプ氏52%、ハリス氏48%と予測。また、選挙情報サイトの270トゥウィンの米大統領選・選挙人獲得見通し(10月30日)発表の勝率はトランプ氏が51.5%、ハリス氏が48.1%と予測しているといいます。

 11月5日の投票日が迫るなか、大接戦のゆくえは不透明です。そうしたなか、米大統領選でトランプ氏とハリス氏、それぞれが勝った場合に株価が上がる銘柄、セクターを予測してみました。

 

大統領選の結果によって影響を受ける銘柄やセクターは一般的に、トランプ氏が勝った場合には石油やガス関連などのエネルギー軍需産業が上昇する傾向があるといわれます。

トランプ氏は前大統領時代から“米国ファースト”を強調し、国内産業の保護を重視してきました。その経済政策は、減税や規制緩和の推進、エネルギー産業の支援を強調するものです。こうした政策により企業の利益が増え、投資家の信頼が高まったことで、多くの銘柄が上昇しました。

規制緩和では、特にエネルギーセクターや金融セクターが期待を持って取引されました。これらのセクターの銘柄の上昇が期待できそうです。また、トランプ氏は大規模なインフラ投資を提案しており、実現に向けて動き出せば、建設インフラ関連の銘柄の上昇が期待できます。

一方、貿易政策の見直しには注目です。前大統領時に中国との貿易摩擦を強化。一部の製造業や貿易関連の銘柄が影響を受けたことは記憶に新しいところでしょう。

こうした要因から、トランプ氏の勝利が株式市場にポジティブな影響を与えると考えられているようです。

ハリス氏ならば、再生可能エネルギー、消費財セクター

一方、ハリス氏の場合はどうでしょうか――。ハリス氏が勝った場合は、再生可能エネルギー環境関連の銘柄が上昇すると予想できます。ハリス氏は環境保護や気候変動対策に積極的な政策を掲げているためで、例えば再生可能エネルギーの普及やクリーンテクノロジーへの投資が増えることで、太陽光発電風力発電関連の企業が恩恵を受けるでしょう。

また、ハリス氏は中間層や低所得者層への支援を強化する政策を打ち出しています。それにより、消費財住宅関連のセクターも注目されるかもしれません。

 注目したいのは医薬品セクターです。ハリス氏は低所得者層や高齢者向けの医療サービスを強化する政策を掲げています。また、薬価の引き下げも目指しており、それにより医薬品の需要が増える可能性があります。ただ、患者にとっては医薬品が手に入りやすくなる一方で、製薬会社にはコスト圧力がかかり、利益率に影響が出る可能性があります。

 ちなみに、トランプ氏も薬価の引き下げを目指しています。

 

 気になる個別の銘柄をみてみましょう。現在、米マクドナルドの株価は$250です(2024年11月1日時点)。また、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)の株価は、

  • Google (Alphabet): $2,800
  • Apple: $150
  • Facebook (Meta): $300
  • Amazon: $3,200
  • Microsoft: $280

 です。

これらの企業は、それぞれ異なる業界でとても強力な存在で、特にテクノロジーにおいてGAFAMは大きな影響力を持っています。マクドナルドはファストフード業界での“リーダー”です。

 X(旧Twitter)のイーロン・マスク氏はトランプ氏を支持しています。トランプ氏が負けた場合、X社の株価にも影響があるのでしょうか――。もちろん、株価は企業の業績、経済状況、市場のセンチメントなど多くの要因に依存しますから、イーロン・マスク氏のトランプ氏支持がX社の業績や市場の信頼にどのように影響するかは予測が難しいですが、仮にX社の株価がトランプ氏の支持に大きく依存しているとすると、トランプ氏が敗れた場合、株価に影響が出る可能性がないとはいえないと考えます。同時に、同氏がCEOを務める電動自動車のテスラ社の株価からも目が離せません。

 

日本製鐵とU.S.Steelの買収劇はどうなる?

日本製鐵と米United States Steel Corporation(U.S. Steel)の買収劇が揺れています。この買収により、日本製鐵は世界的な鉄鋼メーカーとしての地位をさらに強化し、米国市場での存在感を高めることが期待されていますが、難航が予想されています。

トランプ氏は米国ファーストを掲げますから、国内産業の保護を重視して日本製鉄の米国市場での活動を“制限”するかもしれません。ハリス氏の政策は再生可能エネルギーの推進や環境保護に重点を置いていますから、鉄鋼業への環境規制が強化される可能性があります。いずれにしても、日本製鉄の適応力が試されることになりそうです。

どちらの候補が勝利するかによって、注目されるセクターや銘柄は異なりそうです。米国株投資を検討する際には、さまざまな要因を考慮することが重要です。

 

 カブライブ!では、米国やインド、オーストラリアなどの学生投資家たちが運用の成果を競う“投資版オリンピック”、米国株の「国際投資大会」(早稲田大学株式投資サークル Forward主催)の開催にあわせて、米国株投資を楽しむための学習会を8月30日に開きました。米国株投資の初心者でForwardのメンバー11人が参加。講師はロイター通信で編集委員、現在も経済ジャーナリストとして執筆活動を続ける鈴木透氏(カブライブ!編集長)が務めました。学習会では、日本銀行と米FRB(連邦準備制度理事会)の役割の違いをまじえ、米大統領選のゆくえと注目のセクターを探りました。

 なお、「国際投資大会」表彰式11月25日11時から、早稲田大学・大熊講堂で開かれます。

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