為替相場に影響を与える材料  為替の基本の「キ」を学ぼう②

外国為替の仕組みを使った金融商品に、FX(外国為替証拠金取引)があります。そんなFXには、「ファンダメンタルズ」という経済の基盤になる要素を分析し、先行きを見通し、売買方針を立てるトレーダーがいます。

今回は為替相場に影響を与える、主な3つの材料をご紹介します。

物価高は通貨高 物価安は通貨安

一般に、外国為替相場は「景気」と「物価」。そして、それらの要因から「金融政策」を見直し、変更するタイミングで大きく変動するとされています。

景気と為替相場

景気は、国の経済活動の活発さを示す言葉です。経済が好調で、企業がたくさんの商品を売り、新しい仕事が増える好景気であれば、その国の魅力が増すことがわかります。そうなると、投資が活発になり、経済は成長して、旅行者も多く訪れるかもしれません。

そうなると、その国の通貨は買われやすくなり、価格は上昇しやすいといえます。

反対に、経済が停滞し、仕事が少なくなる不景気になれば、通貨は売られやすく、価格は下落しやすいといえます。

物価と為替相場

物価変動と為替相場は密接な関係があります。

物価が上昇すると、同じお金では以前よりも少ない商品やサービスしか買えなくなる状態です。例えば、経済が良くなり企業が商品の値段を上げて物価高が進むと、お金の価値が下がります。こうなると消費者が困窮し、経済が悪化してしまいます。

逆に物価が下落すると、以前よりも少ないお金で商品やサービスの購入ができます。しかし、企業の収入は減少し、雇用者の給与が減少する場合があるため、経済に悪影響を及ぼします。

基本的に、物価高は通貨高で、物価安は通貨安とされています。

これは、物価の変動で国が行う対策である「金融政策」が関係しています。

 

金融政策が為替相場に与える影響

金融政策とは……

金融政策は、中央銀行が経済の安定や成長を促すために行う政策のことです。金利の調整や、市場への資金供給などが含まれます。

金融政策が為替相場に与える影響

日本では、中央銀行である日本銀行が金融政策を実施します。「金融政策決定会合」がそれで、この場で金融政策が決まります。

金融政策によって金利などが変更されると、為替相場にも影響が出ます。

一般的に金利が上がると、その国の通貨に対する投資が増え、通貨の価値が上がります。逆に、金利が下がると、通貨の価値が下がる傾向にあります。

例えば、アメリカの金利が上がれば、より多くの投資家がドルに投資することになるため、ドルは上昇しやすいといえます。

具体例

2008年のリーマン・ショック後

アメリカで大きな金融危機が起こり、世界中の経済が影響を受けました。アメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)は金利を大幅に下げ、経済を刺激するために大量のドルを市場に供給しました。これにより、一時的にドルの価値が下がり、ドル円相場では円が強くなりました。

アベノミクス

2012年末から日本で始まった経済政策です。日本銀行は大規模な金融緩和を行い、金利を下げて市場に大量の円を供給しました。これにより、円の価値が下がり(円安)、輸出企業が利益を上げやすい環境がつくられました。

経済の世界では、これらの要因が複雑に絡み合いながら、為替相場に影響を与えています。投資家や金融政策を行う当局者は、「景気」と「物価」、「金融政策」の3つの動きを注意深く見守ることが、為替相場の先行きを予測するヒントになるといえます。

為替のおさらいクイズ

Q. 金融政策が為替相場に与える影響の説明で間違っているのはどれでしょう?

プロフィール

児山 将(こやま・しょう)

2009年からFXトレードを開始。強制ロスカットを10数回ほど遭遇しながら、2013年に収益が安定。金融メディアで、FXのWEBサイトの運営や記事制作、個人投資家への取材などを担当。ファンダメンタルズ分析の知見を養う。

2018年に投資家兼フリーランスとして独立。日本株、米国株、仮想通貨、商品など多数の金融商品を取引。YouTubeでは、ファンダメンタルズ分析と需給、イベント、統計データなどを発信中。

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