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国内初、通話データでAIをもっと“ヒトらしく”  ベルシステム24、目指すは完全自動化のコンタクトセンター

 BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手がけるベルシステム24ホールディングス(東京都港区、6183)が、通話データからナレッジベースを自動生成するAI機能を搭載したコンタクトセンターの自動化ソリューション「Hybrid Operation Loop」の提供に向けた開発をスタートすると、2024年11月28日の「コンタクトセンター自動化に向けた戦略説明会」で発表しました。

 今年6月にスタートした「生成AI Co-Creation Lab.」に参画する日本マイクロソフトをはじめとするテクノロジー企業の最新技術と、ベルシステム24が持つコンタクトセンターのノウハウを組み合わせることで、独自のAIとヒトのハイブリッドによる業務ループプロセスを設計。それにより、さまざまな業界の個別の環境に対応が可能なコンタクトセンターの自動化を実現します。

 

ヒトとAIの”ハイブリッド”

労働集約型のコンタクトセンターは、多くの企業が深刻な人手不足に陥っており、その解決に向けて、生成AIを活用した自動化は大きな期待が寄せられています。ただ、個社の情報や専門用語を踏まえた高精度な回答を自動化するためには、マニュアルやヒトの経験、個人のメモといった暗黙知などを含むナレッジの整備が不可欠で、その整備には膨大なコストと時間を要することが大きな課題になっていました。それにより、導入がなかなか広がりませんでした。

 そこでベルシステム24は生成AI Co-Creation Lab.を立ち上げ、まずは導入時のナレッジ整備が容易となり、従来負荷が大きかった継続的な日々の更新作業が効率的となるナレッジの自動生成をプロセスに組み込んだ新たな仕組みの開発に着手。ナレッジの整備にかかる作業が効率化され、導入コストと運用負荷の大幅な削減を実現しました

 最大の特徴は、国内初となる「Hybrid RAG」(RAG:大規模言語モデル=LLMによるテキスト生成に外部情報の検索を組み合わせることで回答の精度を上げる技術)による通話データからナレッジベースを自動生成する機能を搭載していることです。「Hybrid Operation Loop」は、生成AIとヒトによるコンタクトセンターでの業務ループ構造を設計。回答の自動生成に特化した生成AIと、ナレッジの自動生成に特化した生成AIをプロセスに組み込むことで、応対の通話データからナレッジベースを自動生成する技術と仕組みを搭載した、ベルシステム24が独自開発した自動化ソリューションになります。

「Hybrid Operation Loop」の自動化フロー概念図

「Hybrid Operation Loop」の自動化フロー概念図

 

 Hybrid RAGによる検索性能の向上で、従来のRAGでの「類似性」の情報検索に加えて、「関連性」を考慮したうえで回答を生成することが可能となり、回答の精度が飛躍的に向上。より生成AIによる自動化とヒューマンチェックを組み合わせる「Human-in-the-Loop」の概念によって、ハルシネーション(AIが学習したデータに基づいて、事実とは異なる情報や存在しない情報を生成する現象)を最少化したオートループを実現したのです。

 ベルシステム24の執行役員兼デジタルCX本部長の加藤寛氏は、

「(Human-in-the-Loopは)ヒトと生成AIが共存する新しいオペレーションのあり方。ハイブリッドです。目指しているのは完全自動化ですが、その一歩手前までは、もう実現できます」

 と胸を張りました。

ベルシステム24の加藤寛デジタルCX本部長

ベルシステム24の加藤寛デジタルCX本部長

一方、生成AI Co-Creation Lab.でのベルシステム24との協業を通じて、コンタクトセンターの自動化と顧客体験の向上を支援する日本マイクロソフトは、執行役員 常務エンタープライズサービス事業本部長の三上智子氏が登壇。「MicrosoftのAI技術の活用で、日々の通話データからナレッジベースを自動生成するプロセスを構築し、高精度な問い合わせ対応を実現することで、コンタクトセンターの効率化とCX(顧客体験価値)の向上の検証を支援。ヒトらしさを追求した回答を提供していきます」などと話しました。

 

5年後の売り上げ目標500億円「早期達成できる!」

ベルシステム24は、2025年中のサービス提供をスタート。「Hybrid Operation Loop」の開発・提供で、自社でコンタクトセンターを運営する企業を主なターゲットに導入を進め、5年後の売り上げ規模で、導入時のサポートなど関連するBPO業務も含めた500億円のビジネスの創出を目指します。同社は、40年にわたり培ってきた幅広い業界でのコンタクトセンター運営の知見をベースに、今後は「Hybrid Operation Loop」を通じて効率化のみならず企業のCXの向上を実現する最適な自動化を支援していくとしています。

 その第1弾が今年11月、有料多チャンネル放送「スカパー!」の問い合わせ窓口業務を2000年から受託しているスカパーJSAT(東京都港区)と、同社の100%子会社で高品質なカスタマーセンター運営などを提供するスカパー・カスタマーリレーションズ(東京都品川区、SPCC)を、両社の合弁会社としたM&A(企業の合併・買収)です。ベルシステム24はSPCCの株式51%を保有し、子会社化しました。

ベルシステム24と日本マイクロソフトが「Hybrid Operation Loop」を共同開発(ベルシステム24ホールディングスの梶原浩社長:左と日本マイクロソフトの三上智子常務:右)

ベルシステム24と日本マイクロソフトが「Hybrid Operation Loop」を共同開発(ベルシステム24ホールディングスの梶原浩社長:左と日本マイクロソフトの三上智子常務:右)

 

 こうしたM&Aは労働人口の減少に起因する今後のBPO分野でのビジネス拡大に向けて、「生成AI×ヒト」による革新的なハイブリッド型コンタクトセンターの早期実現を、コンタクトセンターの効率化やCXの向上を図りたい企業等と共同で推進していくことを目的としています。ベルシステム24ホールディングスの社長執行役員CEOの梶原浩氏は「スカパー!」問い合わせ窓口をはじめ、生成AIなどの新たな技術を活用した先進的なコンタクトセンターのモデルケースとして強力に推進していくとしたうえで、

「(スカパー!のようなケースを踏まえれば)目標(500送円)は早い段階で達成できる」

 と自信をのぞかせました。

 

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