株価4万円台、史上最高値を更新? 日本経済は?? 学生投資家はどう見る
2024年3月4日、東京株式市場で日経平均株価の終値が史上初めて4万円を超えた。2月22日に、34年2か月ぶりに史上最高値を更新。終値で3万9098円68銭を付けてから、その後も連日のように最高値を更新してきた。バブル崩壊後のデフレ経済下で続いた日本株の低迷は、ついに歴史的な水準に到達した。
背景には、世界的な金融市場の“カネ余り”がある。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待や、不動産バブルの崩壊で景気低迷が深刻な中国から逃避した投資マネーが日本の株式市場に流れているとされる。
その後、株価は4万円を割れたが、3月19日、日本銀行が金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する大規模な金融緩和策の見直しを決めると、東京株式市場では円安が進んだことなどにより、一時3万9900円台まで値上がり。再び4万円に迫った。日銀は、長期金利の誘導目標を撤廃。短期金利については今後、代表的な指標である「無担保コール翌日物」の金利を0%~0.1%程度で推移するよう促すという。短期金利の利上げは、2007年以来じつに17年ぶりのことだ。
日本人投資家が初めて直面する「株価4万円台」。投資初心者にとって初体験の、空前の高値圏。学生投資家がマジメに株式市場に向き合い、冷静に分析してくれた。
目次
今の日本経済「それほど悪い状況ではないかも…」
明治大学の投資サークル Breakouts!の城正人さん(3年)は、
「さまざまなモノが値上げされているのはつらいが、肌感覚では上向いてきていると感じる。そもそも資本主義経済が緩やかなインフレを前提に成立しているという前提に立ち返ると、そう悪い話ではないと思う」
と話す。
日本経済が変わりつつある理由はさまざまな要因があるが、「わたしは最終的には円安とそれに伴うコスト上昇、売価への転嫁が日本経済復活への起爆剤となったと考える」と指摘する。
「これまで『ラーメン1000円の壁』なんて言われるようにモノの値段が上がらないことに消費者が慣れてしまい企業は値上げをせずなんらかの形で原価上昇を吸収していた。それは当然人件費の上昇に対しても負の影響を与えていた。
諸外国の金融政策も相まって、コロナショックでは100円割れすらマークしたドル円レートはいまや150円で推移している。1000円なんて、ドル換算したら6ドルそこら欧米諸国であればレストランでオレンジジュース1杯分程度だ。
当然、『安く高品質な日本』を目当てにインバウンドの観光客は殺到。すでにコロナ前水準まで復活。このまま観光立国として舵取りをしていくのか、はたまた得意とする半導体産業を中心に技術立国としてもう一度世界を席巻するかはわからないが、そう考えると、それほど悪い状況ではないのではないか」
「実感なき株高」のわけは?
さらに、城さんは「史上最高値」の現状をPBR(株価純資産倍率)とPER(株価収益率)の視点から評価した。
PBRは、企業の純資産に対して時価総額(株価)がどれほど大きいかという指標だ。2023年に東証が発表した「PBR1.0倍割れ」企業への提言にみられるよう、当時日本ではPBR1.0倍割れ企業が市場の約半数を占めていた。キツい言い方をすると、PBR1倍割れ企業など、さっさと解散して株主に資金を返却すべき,そう言うこともできる。
その中にはPBR0.2。つまり、企業が解散したら株価に対して5倍の金額が株主へ付与される。銘柄すらあったから驚きだ。最近は東証の提言も影響してか、資本効率に対して企業もようやく本腰を入れ始めていることがうかがえる。
このようにPBRの観点からみると、これまでの異常な状態が正常化に向かい始めているだけともいえる。
次に、PERを分析する。PERとは利益に対して株価が何倍の倍率で買われているかという指標。もちろん、金利情勢などにより「正常な水準」というのは変化するが、一般的に15倍程度が標準といわれる。大和証券のレポートによれば、現在の東証TOPIX平均PERはおよそ15倍。株価も上昇しているが、値上げや効率化など企業の努力が実を結び利益が増加。きわめて正常な範囲に収まっている。
「『株価、史上最高値』の評価は、やれ『実感がない』『バブルだ』なんて声もチラホラだが、PERとPBRの指標上はかなり適正な水準で推移している。ちなみに、バブル時代のPERは60倍、PBRは5倍と、今では考えられないほどの高水準である」(城正人さん)
もっとも、「実感がまったくない」という人はNISAやiDeCoなど、国が全面的に投資をバックアップしているにもかかわらず、投資には1円も回したくないという人ではなかろうか。
「株高」はまだまだ続く?
さて、株高はまだ続くのだろうか――。
こんな質問に、早稲田大学の投資サークルForward、リュウさん(3年)は、現在の株高は「依然として続く」と考えている。理由は二つ。
「一つは対ドル、対ユーロに対する著しい円安だ。現在の日経平均株価は1989年のバブル時の最高値を更新している。しかし、円の価値はどうだろう。1989年に130円台だったドル円は2024年2月末現在150円台である。こういった指標を見て、為替以上に日本円が対ユーロ、対ドルに対してその力を失っていることが垣間見えるだろう。
次に、好調な企業業績だ。1989年のバブル最高値の際の東証一部のPER(株価収益率)は60倍を超えていた。一方で2024年2月末の東証プライムのPERは17倍ほどで、バブル期の4分の1ほどである。つまり、今回の日経平均株価の上昇はかつてのバブル期と比較すると企業業績が株価の実態に則していると考えられ、投機的な高騰であるとは考えにくい。
実際、このPERは17倍が投機的ではないと考える根拠に米国株を挙げたい。米国株も現在、半導体関連銘柄(NVDA)によって実態と若干乖離し、バブルぎみと呼ばれているS&P500のPERが約25倍である。またS&P500の過去10年間の平均PERは約20倍となっており、現在の東証プライムの17倍という数値は決して割高とはいえない数値であると考える。加えて、円安も相まってドル建て、ユーロ建てで見た時の日本株はかなり割安であると言える」
と、説明する。
慶応義塾大学の投資サークル Macro Visionのゆいさん(2年)は、
「今後、株高は継続すると考えます。日銀が利上げ、FRBが利下げを行えば日米の金利差が縮小に向かい、日本経済がより活発になると思うからです。日本ではインフレが続いていますが、物価だけでなく賃金の上昇も伴う、良いインフレが起きてくると感じたのも理由です」
まだまだ、日本株の高値は続くとみている。
カブライブ! 編集部にはこんな声も寄せられた。
立教大学投資俱楽部のO-Sukeさん(2年)は、
「ちょっと過熱ぎみですよね」
と、首をかしげる。
現状の株式相場が「海外投資家でもっているようでは、まだまだ危ないと思います。仮に4万1000円に届くことがあったとしても、すぐにハジけて……。その時に新NISAをはじめたばかりの初心者の人が怖く感じるのではないでしょうか。そこで落ち着いてからが本当の水準ではないかと。3万8000円ぐらいじゃないのかな」と、慎重だ。
ご協力いただいた大学投資サークルのみなさま、ありがとうございました。
(カブライブ! 編集部)