【第7話】 中期経営計画からわかること! ススム先生の「タイパ決算書分析」塾

「流動比率」150%あれば良好、200%で優良!

 

 

連結貸借対照表の資産の部ですが、資産合計1,551億円のうち流動資産が1,199億円、固定資産が351億円で流動資産が約77%です。

 
 

自然災害もあるし、1年先ですらわからないのが実感です。

 
 

では、負債の部を見ましょう。

 
 

負債1,047億円のうち流動負債が697億円、固定負債が349億円です。

 
 

なにか感想はありますか?

 
 

えっと…… わかりません。短期借入金が286億円、長期借入金が305億円もあるのが気になります。

 
 

マナミさんは以前から借入金に反応しますね。

 
 

僕もです。どうしても借金はイヤだなあと思ってしまいますが、先生は成長の源という考え方ですね。

 
 

もちろん一概には言えないですが、以前の講義でお話したとおりです。で、どうですか?

 
 

流動負債は比較的短期間に返済しなければならない負債だから、流動資産が流動負債より多いのは心強い気がします。

 
 

ふむ。それは「流動比率」と言いまして、短期的な債務の支払い能力を見る尺度です。計算は簡単で「流動資産÷流動負債×100」という小学生でもできる割り算で、一般的に100%は当然、150%は良好、200%は優良と言いますが、業種や経営戦略などで差があります。
例えば、短期資金のほうが長期資金よりコストが安い場合、資金調達を長期から短期にシフトすることもありますが、その場合は流動負債が増えます。要は、なぜそうなっているのか、という理由なんです。では、計算してください。

 
 

1,199億円÷697億円=172%です。合格ですね。

 
 

前会計年度、2023年3月期はどうですか?

 
 

1,142億円÷649億円=175%でした。ほとんど同じです。

 
 

このように目に見えた安定性が社歴と経営基盤のある企業の強みだと私は思います。でも、ほんとうに流動資産で返済できるのか、と思いませんか?
半年間で流動資産は1,142億円から1,199億円と57億円増えていますよ。次回はこのあたりから検証しましょう。

 
 

はいっ!

 

 

プロフィール

井上 享(いのうえ・すすむ) 日本公認不正検査士協会認定 公認不正検査士(CFE) 1982年に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、大阪銀行(現:関西みらい銀行)に入行。退行後、会計知識、法律知識、犯罪心理学、調査手法の4つの分野の試験に合格し、かつ米国公認不正検査士協会の認定よって与えられる公認不正検査士(CFE)の資格を取得。金融関係の不正行為・不祥事を防ぐべく、活動している。 主な著書に「銀行不祥事の落とし穴 第1巻、第2巻」、「中小企業融資自己査定Q&A」、「説明義務・勧誘ルールと苦情対応事例集」(いずれも、銀行研修社)。現在、月刊銀行実務(銀行研修社刊)に「金融不祥事 転落の死角」、金融経済新聞に「STOP! 不祥事!」を連載中。 ドラマ「幸せになる3つの買い物」監修、映画「シャイロックの子供たち」銀行監修。 兵庫県神戸市出身。

関連記事一覧